ずっと前、私を好きだと薫くんは言ってくれた。
純粋に嬉しかった。
でも……その言葉の意味を深く考えないようにしていた。
だって知ってしまったら、傷ついてしまうような気がして。
私に向けられたその「好き」は、「面倒見の良い近所のおねえちゃん」ってだけかもしれない。
私が期待するような「好き」ではないのかもしれない。
そうだとしたら……――。
しずめなきゃいけないと思った。
この複雑な気持ちを。
私は、あえて部活に入った。
忙しい口実を作った。
いずれ薫くんは他のことに興味を持って、自分から離れるに決まってるから――。
でも 本当は
薫くんと遊びたかった。
本当はずっといっしょにいたかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。