彼はそう言って大きな瞳をウルウルさせ始めた
「ねぇあなた、俺かっこよくなったでしょう?ねぇ…あなた……俺を、ちゃんと…見て…」
最後には言葉が詰まって、眉がハの字になった。
今もした唇を噛んでるけど、さっきの感情とは違うみたいだ
『見てるよ…こんだけ近くにいるんだしさ…』
「違う。…違う違う。あなた違う。ちゃんと俺を…見て。いっつも近くにいたのに、あなた……俺と目あわせてくんないんだもん。幼稚園とか小学生とか…ちっちゃい時は抱っこさせてくれたのに、どんどん俺から離れてっちゃうんだもん。抱っこ…」
『え…』
ジョングクくん、泣いた
「抱っこ……したい…。あなた抱っこしたい…」
情緒不安定かよ…
「うぅ…あなた…っ…んっ」
『なに泣いてんの!?えっ!?』
「いっぱい思い出、思い出しちゃった……んぅっ。ぐずっ…あなたは、変わっちゃったっ…。やだ…元カレとか今彼とかキスとか手をつなぐのとかそれ以上とかもう、全部…全部全部全部全部イヤだ!!!イヤだよぉあなた~~~~~~っ」
ぼろぼろ涙をこぼしながらそう言った彼は、とうとう私の手を離してお山すわりで号泣し始めちゃった
「もうやだぁっ…ひくっ、う…うっうっ…あうあぅ…」
『ちょっと…』
しゃっくりあげながら小っちゃくなって声をあげて泣いてる。
こんなに泣いてる男の人見るのは初めてだ。
おっきい体が泣いてる
何となく背中をさすってあげてると、ぴょこっウサギの顔と顔をあげて、目元だけを出した。
まつげが濡れてて目がまっかっか。
黒い瞳がどこを見たらいいのかわかんない、って感じに下のほうを見てる
「わ、わがっ…うぅっ、ひくっ…てよ」
『え?なんて?』
「わがれでよっ!!(※別れてよ)」
『ヤ。』
「いやだヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!わ~~~~ん」
『うるさいから』
耳をふさいで離れると、鼻をチーン!ってかんだ彼は、ハイハイして迫ってきた。
やばめっちゃ顔近笑
「…今彼となにしたの?」
『でたまた変態』
「キスと?手をつなぐのと?ハグ?」
『……』
「えっもしかしてシた?」
『それはシてない。キスはした』
って言った瞬間に、彼の顔が近づいてきて傾いた。
キラキラ輝くジョングクくんのピアスの向こうにこの家の玄関が見えた。
唇に柔らかいものが当たる
ちゅっ…っ…
「ん……はぁっ……んー…」
この家の玄関から中を覗いた時、人の匂いがした。
その匂いはジョングクくんの匂いだって今気づいた。
近くにいるから香る体香。
黙ってキスされている私をいいことに、彼のキスに熱がこもってくる
ちゅ…ちゅっ、ちゅっ
「はーっ…んふぅ……んっ、ん…」
舌は入れずに、唇だけを重ねる。
彼が私の耳の後ろの髪を指ですいて、頭を引き寄せてくる
苦しくなった私が息をすると、彼はほんの少しだけ離れた。
耳を触られてくすぐったがってると、顔を正面に向けられる
「…ね」
瞬きせずに柔らかいまつげに見つめられてドキドキしてきた
「あなた…」
『……』
「あなた?」
『え…?なに…?』
「これじゃあ俺がキスしてるだけだよ」
「⚘༯、キスしたことあるんでしょ?…《キスされる》じゃなくて《キスしよう?》……二人でこうやってさ…」
ちゅう、って唇を吸われる
『ん…』
「して…俺の唇も…。んっ……」
かぷって噛まれて、舌で刺激される。
なんかすごい心臓が…
「二人でキスしよ…」
『んんっ…』
ぐいぐい押されてキスが気持ちよくなってきて、私はジョングクくんにキスしちゃった
「はぁっ…」
かぷって唇を覆われて、ぬるぬる舌を突っ込まれた。
ジョングクくんの舌がちょっと冷たくて気持ちいい。
気が付いたら彼の腕を掴んで必死にキスしてた
『ふぁ…んっ…』
「んーっ…ふーっ…」
二人とも息が上がってた。
はじめて自分が深いキスしてるんだって分かるような音が耳に届いた。
今までの彼氏とはただただ襲われるみたいな感じだったから、こんな雰囲気あるの初めて
「はぁっ…ふー…」
『……ジョングクくんキス上手』
離れると、私の唇についた唾液を親指で拭って来た。
私の言葉を聞いた彼は色っぽくそしていたずらっぽく笑った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!