第102話
ひ ゃ く い ち ☺︎
風雅「…何?」
あなたの家のドアの前には、
拓哉が立っていた。
あなたをおぶる俺を見て、
目つきが変わった。
拓哉「…付き合ってるん」
風雅「待ち伏せしとったん」
あなた寝ててよかった、
なんて思いながら、俺はドアを開けた。
拓哉「待って」
風雅「もう諦めたほうがいいんちゃう」
そう言って、
俺は家に入った。
その瞬間、ぎゅっと、
あなたの腕に力が入った。
風雅「起きてたん?」
あなた「起きちゃった、」
風雅「大丈夫?」
あなた「風雅いるから、」
風雅「うん、ならよかった。降ろすで、」
あなたは降りると、
後ろから、俺にぎゅっと抱きついた。
あなた「っ…グズッ、」
大丈夫ちゃうやん、
ぜんぜん。
風雅「ごめんな」
あなた「風雅は何も悪ない、グズッ、」
風雅「…中入ろ?風呂入って、ゆっくりしようや。」
あなた「うん、やね…」
あなたの腕が、
するっと解けた。
どうしてあげるのがいいんか、
俺にはよく、わからんかった。
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あなた「風雅、」
風雅「ん?」
あなた「…また、遊びに行きたい」
" また "
が無いと不安で、
わたしは思わずそんなことを言った。
隣で横になっている風雅は、
目を開け、
わたしをぎゅっと抱き寄せた。
風雅「俺も。…会いに行けるとき、行くから。」
あなた「ほんま、?」
風雅「うん、暇やし」
あなた「ひまちゃうやろ、笑」
風雅「学校あんま行ってないねん」
え、?
そうやったんや…
あなた「…わたしも」
風雅「そうなん?」
あなた「行けてないねん、まったく、」
風雅は、
そっと、わたしの頭を撫でた。
風雅「辛かったな。」
あなた「でも、今は幸せやで」
風雅「俺も。」
あなた「今日、ほんまに楽しかった」
風雅「何回目?笑」
あなた「だって…こんな楽しいの久しぶりやってんもん、」
風雅「もっと楽しいこといっぱいしよな」
あなた「する。」
わたしは、
風雅の頬をそっとさわった。
風雅「ん?」
あなた「かわいい」
風雅「かわいいは嫌や」
あなた「え~、」
風雅「次どこ行こか」
あなた「海、…夏のうちに、行きたいな。」
風雅「ええやん。」
あなた「なんか無いんかな、穴場的な。」
風雅「気にせんでいいよ、家族連ればっかやろ。」
そう、
なんかな。
風雅「ちょっと待ってな」
風雅はスマホを手に取り、
カレンダーを確認した。
風雅「次の休みちょうど1週間後やわ。空いてる?」
あなた「うんっ、いつでも。」
風雅「じゃあそこな。」
あなた「うんっ、めっちゃ楽しみ。」
風雅「また今度いろいろ決めよな。」
その日まで、
会えへん。
そう思ったら、ちょっと胸が、ぎゅっとなった。
風雅「なあ、」
あなた「ん?」
風雅「お母さん忙しいん?」
あなた「うん、なんか、もともと出張多いねんけど、最近特に多くて。」
風雅「そっか、」
あなた「あと、来週から海外やねんて、1週間。」
風雅「え、1週間?」
あなた「うん、」
風雅「寂しくなったら連絡して。いつでも行く。」
あなた「うん、ありがと。…ん、」
あくびをグッと堪えると、
じわっと涙が浮かんだ。
風雅「我慢せんでいいのに笑 …寝よか。」
あなた「うん、」
風雅「おやすみ。」
あなた「おやすみ。」
毎晩泣いてたんが、
嘘みたい。
今は何も、悲しくない。
あなた「風雅、」
風雅「ん?」
あなた「ありがと。」
わたしを抱きしめる腕に、
少し、力が入った。
なぜか、じわっと涙が浮かんだ。
なんでやろ、
幸せすぎて、かな。