第3話

3話 鬼火に導かれて
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2021/08/23 02:04
私はその“火”を見た瞬間「怖い」とも「懐かしい」とも思った、でもなによりも


鬼火「あたたかい」


と、思ってしまった

もう二度と思うことも感じることもないと思っていたそのあたたかさに安心と恐怖を感じた


鬼姫「私に話しかけたのはあなた達ですか?」

火「……、」


言葉が帰ってくるハズもない、きっとさっきのは私の聞き間違え……、


火「そうだよ」 

鬼姫「え?」

鬼姫『今のは?今のも聞き間違え?』

火「ついてきて」

火「おいで」

火「おいで」

火「おいで

鬼姫「!?」

鬼姫「まって!」


私は無我夢中で追いかけた


鬼姫『まって、まって』

鬼姫『寒いよ、怖い怖い』


自分の心臓の音が聞こえる

ドクンッドクンッドクンッと、大きく早く鳴り響いている

私は泣きながら火の玉を追っていた

すると、4つのうちの1つの火の玉が私の元に来てくれた

その火の玉は、私の心臓の辺りに止まった


鬼姫『あたたかい』


大きく早く鳴り響いていた心臓は、小さくゆっくりと正常に戻っていき、私の目から涙は消えていた

けれど……、

ある程度落ち着いてから気づいた、いえ、聞こえてしまったのは人間の断末魔だった……

私は怯えてその場から動けなくなってしまった


ぎゃあああああああ
お”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
い”ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ

ビクッ


鬼姫『怖い怖い怖い』


耳を塞いてしゃがんた

只々怖かった、怖くて怖くて仕方がなかった

フワッ


鬼姫『!?』 


心臓の辺りにいた火の玉は私を慰めるようにより一層あたたかくなった

私は、他の3つの火の玉を見た

3つの火の玉は私を守るように私を囲んでいた


火「だいじょうぶ」

火「まもってあげる」

鬼姫「っ、」


その一言は、私が安心するには十分だった

しばらくしてまた


火「ついてきて」

火「おいで」

火「おいで」

火「ぼくたちは、きみといっしょにいたいんだ」


と、言って先程より少し遅めに飛んでいく火の玉

只々、心臓の辺りにいる火の玉はずっと私に寄り添ってくれていた


鬼姫「あったかい」

鬼姫『私にあの断末魔を聞かせないために急いでたのかな』


そんなふうに思ってしまった

だって、それくらいあたたかい声だったから

火の玉は時々地面を跳ねながら飛んでいく、そんな事しなくても飛べるから、私への配慮だと思う

火の玉が触った地面には火で出来た赤い彼岸花咲いた


鬼姫「綺麗、それに温かい」


その彼岸花を見ていると先程の恐怖も寒さも、断末魔さえも忘れてしまえるほどだった

周りの音なんか一切聞こえなかった

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随分と長い時間走っていると思う

火の玉に止まる気配は一切ない


鬼姫『一体いつまで走るのかしら』

鬼姫『それにしても、こんなに走っているのに全く疲れていないのは、なぜなのかしら』

火「ついた」

火「ついた!ついた!」

鬼姫「え?ついたって」


そう私が聞いた瞬間4つの火の玉が猛スピードで同じ方向に飛んでいく


鬼姫「ま、まって!」


私もその後を追った

火の玉達は沢山の扉を開けて飛んでいく

いつの間にか、なにか建物の中に入っていたようだ


鬼姫『ここは何処なの』


バァンッ

一際大きな扉を開き火の玉はその扉の奥に入っていった

私もその後を追って入った


???「なんですか?貴方」

???「次の裁判は貴女の番ではありませんし、獄卒もいませんし」

鬼姫『??』

???「間違えて入ってきちゃった?」


扉の先には、一際大きな男の人(人?)と、その人が大きすぎるためあまり目立たないが大きな(角があるから)だぶん鬼がいた

だいぶ前から勘付いてはいたけれど、ここはやはり“地獄”なのではないかと思った

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