鬼灯「閻魔大王、これが彼岸花さんの資料です」
閻魔「うむ」
閻魔「!」
閻魔「鬼灯君、君この資料見た」
鬼灯「えぇ、見ましたよ」
閻魔「……、」
鬼姫「……、」
鬼姫「あ、あの」
鬼姫「私、なにか悪い事をしでかしてしまっていたでょうか」
鬼灯「いいえ、貴女は何もしていません」
閻魔「あぁ」
閻魔『これはよく自分の子供にこんな酷いことができるな』
閻魔「君は本当に何も悪いことはしていないよ」
鬼姫「え!」
鬼姫「で、ですが」
鬼姫「私を産んでくださった方達は、私が生まれた事自体が罪だと言っていました」
鬼灯「そんな事はありませんよ」
鬼灯「この世に産まれてはいけない子供などおりません、そもそも産まれてくる子供に罪がある訳がないんです」
鬼灯「その場合悪いのは子供を産んだ両親です」
鬼姫「!!」
閻魔「そうだよ、彼岸花ちゃん」
鬼姫「じゃ、じゃあ私は」
閻魔「文句なしの天国行きだよ」
閻魔「それともすぐに転生したいかい?」
鬼姫「!」
鬼姫「い、いえ」
鬼姫「私、転生だけはしたくありません」
鬼姫「また、あの悪夢に戻ってしまうようで」
閻魔「……、」
鬼灯「……、」
閻魔「じゃあ、天国にi」
鬼灯「いっその事、地獄で働きませんか?」
鬼姫「え?」
閻魔「鬼灯君!?」
鬼灯「地獄は常に人手不足」
鬼灯「本当に猫の手も借りたい位大忙しなんです」
鬼灯「一人でも多くの人材を集めたいと思っています」
鬼姫「……、はい」
鬼灯「ですので、彼岸花さんも地獄で働きませんか?」
鬼姫「え?」
鬼姫「だ、駄目です」
鬼姫「私、教養も何もなかったので何もできませんよ」
鬼姫「字すら読めないんです」
閻魔『本当に酷い親だったんだなぁ』
鬼灯「大丈夫ですよ」
鬼灯「3ヶ月間かけて私がイチから教えましょう」
閻魔「え!3ヶ月間それは流石に酷じゃない?」
閻魔「そもそも3ヶ月だけで14年間の勉学が出来るの?」
鬼灯「出来ます」
鬼灯「確かにかなりキツイですが、彼女の能力から見て問題ありません」
鬼姫「字も読めないのにですが?」
鬼灯「貴女は自分の能力を見誤っています」
鬼灯「貴女は殆ど一人で居た為、話し相手ももちろんいませんでした」
鬼灯「それなのにしっかり言葉を発せています」
閻魔「あっ!確かに凄いかも」
鬼姫「えっ?」
鬼姫「何がですか?」
鬼灯「人間とは元々、親や周りの人間の言語を真似して話し方を覚えていきます」
鬼灯「ですが貴女は親も全く家に帰って来ず、話す機会がない」
鬼灯「それに家から出してもらえないため、他人に会うことも無い」
鬼灯「つまり、人と話すこと自体が全く無かったんです」
鬼灯「そう言う人間は普通、話すことが出来ません実際にそういう人間はいます」
鬼灯「なのにしっかりと話すことが出来、その上、相手に合わせて話すことも出来ています」
鬼灯「そして何より凄いのは、これまで人と話すことが全く無かったというのに」
鬼灯「会話内容をしっかり理解していて、一言一言を深く考えているところと」
鬼灯「現状把握が早いことです」
鬼灯「付け加えて冷静と来たらもう完璧です」
鬼灯「正直彼岸花さんに最近考えていた閻魔大王の第2補佐官になってもらいたい」
閻魔『鬼灯くんがこんなに推すなんて珍しいこともあるなぁ』
閻魔『まぁでも、彼岸花ちゃんが凄いのは本当なんだよなぁー』
閻魔『当たり前の事のようだけど、その当たり前さえ学ぶ機会が14年で指で足りるほどの数とは』
鬼姫「め、迷惑じゃありませか?」
鬼灯「迷惑だったら誘いませんよ」
鬼灯「私は貴女が誘いに乗ってくださったなら、普通の教養+地獄での仕事に必要な教養+私が教えたい教養諸々を3ヶ月で貴女に叩き込み立派な大王補佐官に育て上げます」
鬼姫「え!」
閻魔「流石にキツ過ぎだろぅ」
閻魔「それに僕はいいけど、彼岸花ちゃんの意思も聞かずに補佐官にするなんて絶対駄目」
鬼灯「強要はしませんよ」
鬼灯「勿論、私からの教養が終わったあと、補佐官ではない仕事につくのも有りです」
閻魔「フーン」
閻魔「彼岸花ちゃん、かなりキツイと思うけど、どうかなやってみるのは」
鬼姫「えっと」
鬼灯「勿論途中で辞めるのも止めませんよ」
鬼姫「あ、あの」
鬼灯「……、」
鬼姫「私でよければ、よろしくおねがいします」
鬼灯「決まりですね、閻魔大王」
閻魔「そうだね」
閻魔「彼岸花ちゃん、頑張ってね」
鬼姫「は、はい」
鬼姫「ありがとうございます」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。