俺の目の前には笑顔で斧を振り下ろそうとしているそらがいる。
ああ、俺の人生ここでおしまいか。
しかも、最後は最愛の妹に殺されるなんてな。
俺は死ぬのを覚悟して目をつぶった。
誰かの声が聞こえたその瞬間、強い風がビューッと吹いてきた。
あまりの強さに、部屋の隅まで体が飛ばされてしまった。
そして、強風は止んだ。
その声は、いつもは明るくて優しいお母さんだった。
お母さんの手には長い棒と、赤い何かが付いている包丁があった。
その棒は魔法が出せるという特殊な棒らしい。
俺たちを産む前に、神様からの贈り物として送られてきたという。
理由は『死神の子供を育てるのに魔法が使えた方が何かあった時にいいだろう』という事だという。
そらが嫌そうな顔で舌打ちをした。
そらはため息をついた後に立ち上がった。
そして、そらはカラスに姿を変えた。
そらは無言で窓から外へ飛んで出ていってしまった。
母さんは、力が無くなったかのように座り込んだ。
すると、お母さんが俺に抱きついてきた。
母さんのすすり泣くような声が聞こえた。
俺は立ち上がった。
母さんが少し微笑んで言った。
思わぬ答えに、俺は吹き出してしまった。
俺たちは、玄関に向かって動き出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!