第8話

story eight
289
2018/08/21 13:24
俺の目の前には笑顔で斧を振り下ろそうとしているそらがいる。
ああ、俺の人生ここでおしまいか。
しかも、最後は最愛の妹に殺されるなんてな。
そら
さようなら、お兄ちゃん☆
くう
くっ……
俺は死ぬのを覚悟して目をつぶった。
???
はっ!!
誰かの声が聞こえたその瞬間、強い風がビューッと吹いてきた。
そら
わっ!!
くう
わっ!!
あまりの強さに、部屋の隅まで体が飛ばされてしまった。
そして、強風は止んだ。
くう
いった……
???
あんたたち!!何やってるのよ!!
その声は、いつもは明るくて優しいお母さんだった。
お母さんの手には長い棒と、赤い何かが付いている包丁があった。
その棒は魔法が出せるという特殊な棒らしい。

俺たちを産む前に、神様からの贈り物として送られてきたという。

理由は『死神の子供を育てるのに魔法が使えた方が何かあった時にいいだろう』という事だという。
くう
か、母さん……
お母さん(ひらみ)
そら!!あんたなんて事しようとしてるの!!
お母さん(ひらみ)
そんな子に育てた覚えはない!!
そら
チッ
そらが嫌そうな顔で舌打ちをした。
お母さん(ひらみ)
いつからそんな悪い子になったの!?
そら
はぁ……
そらはため息をついた後に立ち上がった。
そして、そらはカラスに姿を変えた。
お母さん(ひらみ)
そら!!
そら
……
そらは無言で窓から外へ飛んで出ていってしまった。
お母さん(ひらみ)
ああ……
母さんは、力が無くなったかのように座り込んだ。
お母さん(ひらみ)
な、何で……
くう
母さん……ごめん
くう
俺、そらの暴走止められなかった……
すると、お母さんが俺に抱きついてきた。
お母さん(ひらみ)
くうは悪くない……
お母さん(ひらみ)
あなたは本当に優しい子に育ってくれたのね……
お母さん(ひらみ)
だけど……
母さんのすすり泣くような声が聞こえた。
お母さん(ひらみ)
私が悪いのよ……
お母さん(ひらみ)
そらの事、しっかり育ててあげられなかった……
お母さん(ひらみ)
きっと、そらには何かつらい悩みがあるんだと思う……
お母さん(ひらみ)
それを消してあげられなかった……
くう
母さんは悪くないよ
お母さん(ひらみ)
え……?
くう
母さんはいい母さんだ
くう
そらも知ってるはずだよ
俺は立ち上がった。
くう
そらの事、探してくるよ
お母さん(ひらみ)
え……
くう
兄として、できる限りのことがしたいんだ
お母さん(ひらみ)
それなら母さんも行く!
くう
母さん、大丈夫なの?
お母さん(ひらみ)
何が?
くう
ずっと気になってたんだけど……その赤い何かが付いた包丁……
お母さん(ひらみ)
え?あー、これね
母さんが少し微笑んで言った。
お母さん(ひらみ)
今、2人の大好きなトマトを切ってたの!
くう
ふはっ!
思わぬ答えに、俺は吹き出してしまった。
くう
何だよそれww
お母さん(ひらみ)
じゃあ!そらを見つけたら、トマトパーティにしましょう!!
くう
おう!それ最高!!
お母さん(ひらみ)
じゃあ急いで見つけましょ!!
くう
ああ!
俺たちは、玄関に向かって動き出した。

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