第19話

裏切りのアイドル
1,832
2020/01/27 07:32
夢叶
夢叶
好きです。朔也くん!
視線は真っ直ぐ、姿勢を正して。
夢叶
夢叶
うーん。なんか、違うような気がする
告白って、どうやってやればいいんだろうか?インターネットで調べても、自分の気持ちを真っ直ぐに伝えることが効果的とは書いてあったけど……。
夢叶
夢叶
もっと、熱く言った方がいいのかな?いや、さっぱりと言った方がいいの?好きな理由も言うべき?
もう一回調べてみるか。スマホを取り出してネットを開く。

HoneyKnightのサクヤ、人気女性アイドルMIKAとお忍びデートか!?
夢叶
夢叶
うん?え?HoneyKnightサクヤ?
って、朔也くんだよね?お忍びデートって、どういうこと?
怖いのに、指で記事を押してしまう。

HoneyKnightのサクヤと人気女性アイドルMIKAが都内の水族館で、お忍びデート!二人は、終始楽しそうに水族館を回っていた。クラゲの展示室では親密そうに顔を近づけて会話をしていた。
夢叶
夢叶
嘘でしょ……?だって、そんな、え?
この水族館って、私が朔也くんと行ったところだし。それより、MIKAさんって誰だろう?知りたくないけど、それよりも気になってしまう自分がいる。
夢叶
夢叶
か、可愛い……
キラキラとした瞳にぷっくりとした唇。見つめられただけで、同性の私でも照れてしまいそう。こんな、可愛い子が朔也くんとデート。
夢叶
夢叶
お似合いだよ……
私、どうしたらいいんだろう?あの告白は嘘だったの?
夢叶
夢叶
でも、芸能人ならこういうこともあると思うし……
お腹の辺りが冷たく重くなってくる。何も、考えられない。考えたくない。

ピコーン
夢叶
夢叶
朔也くん……
このタイミングで連絡がくるなんて。焦る気を抑えながら、メッセージを開く。
「今から、いつもの事務所の部屋に来て欲しい。話したいことがある」
今から!?待って、心の準備が出来てない!話したいことって何?
やだ、やだ、怖い。知りたくない!
冷たくなる指先で、「分かりました」と打つ。これだけを打つのに心拍で胸が潰されそう。
夢叶
夢叶
どうして……こんなことに
*****
大きく、深呼吸を一回二回と繰り返す。
この扉を開けたら、運命が大きく変わってしまうかもしれないと思うと手が震えてくる。暗証番号を一つ一つ確実に押す。ガチャリと鍵が開く音がした。
夢叶
夢叶
失礼します
声が震えないようにお腹から声を出す。
朔也
朔也
……
足を組んでそっぽを向いた朔也くん。
夢叶
夢叶
あ、えーと、今日は真広くんはお仕事ですか?
朔也
朔也
そんなところ
私に向けた言葉に思えない。
夢叶
夢叶
そうですか……
切り出した方がいいのかな?いや、そんな感じじゃないし……。
朔也
朔也
座れよ
自分の隣の席をトントンと軽く叩く。
夢叶
夢叶
あ、はい
言われた通りに隣に座るけど、朔也くんは私のことを見ようとしない。
うっすらと目の下に刻まれた隈と、青白い顔色。
夢叶
夢叶
ワークはどうですか?進んでいますか?
朔也
朔也
やってる
夢叶
夢叶
良かったです。今のが終われば高校二年生の勉強に入れますね
朔也
朔也
……
夢叶
夢叶
……
何を話せばいいんだろう。今、切り出すべき?でも、付き合っている訳でもない私が怒る権利はない。
朔也
朔也
あのさ
夢叶
夢叶
はい!
いきなり声を出したためか、声が上ずってしまった。
朔也
朔也
もう、会うのはやめよう
夢叶
夢叶
へ?
朔也
朔也
俺、本当に好きな人が出来た。だから、おまえとはもう会えない
本当に好きな人?私が、早く答えを出さないで真広くんとデートしたからなの?
朔也
朔也
悪いけど、真広とも会わないで欲しい。今、アイツにとっても大事な時期だから
やっぱり、ただの女子高校生とアイドルじゃ不釣り合いだから?
夢叶
夢叶
え、だって、そんな……私のこと好きって……いや、でも
朔也
朔也
あれは、冗談で……まさか、本気にするなんて
冗談?何を言っているの?嫌だ、信じたくない。
夢叶
夢叶
好きな人って……ニュースに載っている人ですか?
朔也
朔也
誰だっていいだろう?おまえには関係ないことだし
夢叶
夢叶
関係ない?それ、本気で言ってますか?
朔也
朔也
なんだよ。怒っているのか?

バッチーン
 手が痛い。朔也くんの頬も、うっすら赤くなっていく。
これでも、私のことを見てくれないの?
夢叶
夢叶
怒っている?それは、怒りたくもなりますよ!私を馬鹿にしているんですか!?私なら傷付かないとか思っているんですか?こう見えて、今とても泣きたいくらい怒っていますし悲しんでますよ!
朔也
朔也
ごめん……
その言葉が一瞬にして、私の身体の血の気を下げる。
夢叶
夢叶
あ……そんな、なんで謝るんですか……
私、もうここにいられないんだ。心と体がバラバラで部屋を飛び出して、走る。どこに行けばいいのか、どこに行くのか分からない。でも、今は一人で泣きわめきたい気分。

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