——どういう状況なの。
本来いるはずのない二人。
私のことを見ないで吐き捨てるように言う朔也くん。
朔也くんが舌打ちをする。
大地さんが呆れた様にため息を吐く。
*****
机を挟んで私の目の前に、二人が並んで座る。
やっぱり、私のことを朔也くんは一切見ようとしない。私は、我儘になってしまったのかもしれない。会えただけで、嬉しいのに彼の瞳に自分が映っていないと思うだけで、こんなに胸が痛い。
私を守ってくれるためだった。私のためだった。でも、悔しい。私は守られているだけで、二人の重荷になっているのが。
そんなこと言っても、朔也くんも一緒だよ。苦しんでいるじゃない。
溢れる。悲しみが、愛しさが。朔也くんへの想いが言葉となって溢れてくる。
時計の秒針が動く音が、こんな音なんて初めて知った。秒針よりも心臓が早く鼓動を打つ。
真広くんが満足そうに笑みを浮かべる。
真広くんが朔也くんを引きずるように、私の隣に座らせる。
真広くんは振り返らずに、生徒指導室を出て行ってしまった。
*****
朔也くんが、クスクスと笑い出す。
久しぶりに、朔也くんの笑顔を見れた。
やっぱり私、朔也くんが好きだ。
返す言葉もない。
私は首を横に振る。
なんで、泣きそうになるんだろう。
ふわっと朔也くんに優しく抱き締められる。
左手で私も、朔也くんの背中に腕を回す。
嬉しい。愛おしい。こんなにも、人想うことが自分に出来るとは思わなかった。
朔也くんがそっと、私を離す。
真っ直ぐに私を見つめる。
ゆっくりと、朔也くんの顔が近付いてくる。
そして、唇に柔らかな感触。
朔也くんは、いつものように少し雑だけど優しく私の頭を撫でる。
この恋が、正しいのか私にはわからない。
でも、恋に正解なんてない。教科書も教えてくれる先生もいない。
だって、恋はイレギュラーで方程式に当てはまらないものだから。
ただ、そこにある解答は一つだけ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。