第7話

アイドルのお姫様!?
3,511
2019/09/08 01:48
日曜日。
私は彼らに勉強を教えるために、事務所が用意してくれたいつもの部屋に来ていた。


この部屋、最近ではHoney拷問部屋なんて呼ばれているらしい。
 拷問とか一体何のための部屋だ。
ラジオから彼らの曲が聴こえてくる。
夢叶
夢叶
あー新曲だ!やっぱ歌上手いなー、あーあー♪ダメだ、私音痴だもん
DJ
DJ
お聞きしていただいた曲は、HoneyKnightの新曲【HoneyKiss】でした。ここからは、HoneyKnightのお二人のお話を聞いていきます
朔也
朔也
よろしくお願いします
真広
真広
よろしくお願いします
DJ
DJ
早速ですがお二人の休日の過ごし方を教えて下さい
朔也
朔也
休日ですか。そうですね、この頃はずっと勉強してますね
真広
真広
僕も、同じです。スーパー家庭教師の先生がこの頃、勉強を教えてくれているんです
家庭教師の先生って――えー私?
DJ
DJ
確か、お二人とも十七歳ですもんね! その先生はどんな先生なんですか?
朔也
朔也
その先生、誰よりも俺達の努力を理解してくれて、もっと俺達が頑張れるように背中を押してくれるんです
夢叶
夢叶
えー!ほめ過ぎじゃない?
真広
真広
僕達の周りにはいないタイプの人で、すごく新鮮なんです!たまに、厳しい時もあるけど
真広くん……そんなに厳しいかな?
DJ
DJ
素敵な先生なんですね。もしかしたら、先生も聞いてくれているかもしれないですね
え、ちょっと待って!心の準備が!
朔也
朔也
なんか、恥ずかしいですね。先生、いつもありがとうございます。先生のおかげで勉強の面白さを知ることが出来ました。これからも、僕達の素敵な先生でいて下さい
夢叶
夢叶
あ、え、こちらこそ!
どうしよう……嬉しくて泣きそう。
真広
真広
先生、聞いてる?僕もっと頑張るね。先生は僕達の最高のたった一人の先生だからね
最高の先生……私はただ本当に勉強を教えているだけなのに。
夢叶
夢叶
私なんかが、最高の先生でいいのかな……
嬉しさもあり、気恥ずかしさとか色んな感情で涙が出て来る。
こんなに、感動して泣いたの小学校の時の「ごんきつね」の授業以来だ。
ぐすん。
真広
真広
え、うそ。泣いてんの?
夢叶
夢叶
え?
朔也
朔也
お、おい!泣くなよ!
ラジオからじゃない!
声の方を振り返ると、サングラスと帽子で変装した朔也くんと帽子を被った真広くんが立っていた。
夢叶
夢叶
なんで、ここにいるんですか!?今、ラジオで——
真広
真広
それ、収録したやつだし
そういうことか。ビックリした。というか、恥ずかしい……。
朔也
朔也
というか、そんなことで泣くなよ
朔也くんがワシャワシャと頭を撫でてくる。ちょっと、雑なんだよね。
真広
真広
夢叶っち、可愛すぎー
真広くんは涙を指先で拭ってくれる。真広くん、普段は意地悪なことしてくるけど、こういう時は優しいんだよね。
真広
真広
もっと、自分に自信を持ちなよ。その、ダサい服以外は夢叶っちは最高だよ
ん?褒められたの?けなされたの?
ダサいといっても、白いシャツに赤いロングスカートなんだけど。普通だと思うんですけど!まあ、確かに二人はおしゃれだから私の服装がダサく見えるのはしょうがないけど。
黒いジャケットに、黒いTシャツ、黒いズボン、と黒一色で統一された服装の朔也くん。
赤紫色のシャツに灰色のボリュームがあるズボンに革靴を履くハイセンスな真広くん。
朔也
朔也
そうだな。もう少し自信を持てるように変えてやるよ俺達が
朔也くんと真広くんが私の両脇を抱えてくる。まるで、未確認生物の捕獲みたい。
夢叶
夢叶
え、ちょっと!今日は、課題をやる予定では?
真広
真広
課題?それどころじゃないから!もう、これは末期!
引きずられるように、部屋から連れ出される。私、どこに連れて行かれるの!



大地
大地
また、夢叶ちゃんを困らせているんじゃないだろうな?
大地さんが運転する、ワゴン車に乗せられてどこかに連れて行かれる。
朔也
朔也
まさか。大丈夫ですよ。ね?
朔也くんの圧がすごい。
夢叶
夢叶
え、あっはい!
真広
真広
僕達の大切な先生なんだから、困らせるはずないじゃん
大地
大地
また、調子の良いことを
車が停まる。
大地
大地
着いたぞ。あまり、迷惑を掛けないように。終わったら、連絡してこいよー
朔也
朔也
分かっていますって。ほら、降りろよ
駅から少し離れた場所にあるおしゃれなブティックだった。
朔也
朔也
ぼーっとしてないで行くぞ
朔也くんが不意に、私の右手を掴んでくる。
夢叶
夢叶
え、あ、はい
手を握られただけで、恥ずかしくなっているのバレたらまた、からかわれる!平常心!平常心よ、夢叶!
?
あ、いらっしゃい。今日は、どうしたの?
店の奥から、緑色の髪のおかっぱに全身デニムの格好の細身で長身の男の人が出てきた。
朔也
朔也
あ、タナカさん。店の奥借りていいですか?
タナカ
タナカ
いいわよ。何か必要なものは?
真広
真広
女性用の可愛い服、あるだけ持って来て欲しいです
タナカさんがニヤリと笑みを浮かべて、私に顔を近づける。
夢叶
夢叶
え、えーと。初めまして……
ジーっと、見つめたまま何も言ってくれない。ちょっと、怖いんだけど。
タナカ
タナカ
あなたが事務所で噂の家庭教師ちゃんね!
事務所で噂になってるの!?
タナカ
タナカ
眼鏡を外して、髪を下ろしたら結構いいんじゃない?
タナカさんはいきなり、私の眼鏡を取る。
夢叶
夢叶
め、眼鏡が無いと見えづらいです!あ、あの!
朔也くんと真広くんに穴が空きそうなぐらい見つめられる。
夢叶
夢叶
そ、そんなに見ないで下さい!恥ずかしいです
朔也
朔也
なんで?ない方が可愛いけど?
夢叶
夢叶
え?
真広
真広
うん。もっと、可愛くなった
タナカ
タナカ
でしょ?ほら、奥へどうぞ
二人が私に手を差し出してくる。
どういうつもり?え、どうすればいいの?
朔也
朔也
ほら、お姫様。手を取って
あ、アイドルのサクヤくんの笑顔だ。
真広
真広
可愛い、僕達のお姫様。おいで
真広くんが私の手を取ると、手の甲に優しくキスをする。
私の思考が停止した。あれ?私の目の前にいるのは王子様?
タナカ
タナカ
あら、ヤダ! ちょっと、良いモノ見せてくれるわね!
タナカさんの楽しそうな声が遠くに聞こえてくる。

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