第98話

97話:伏黒side
26,761
2022/11/19 22:00
伏黒恵
(何だ…?)












何やら外が騒がしい。













気になっていると、仲が良さそうに月城さんと話していた女性二人が窓に近づいて、外の様子を伺った。











毛利蘭
…え!?
鈴木園子
あなたさん!?











"あなたさん"という単語に、早足で窓に近づく。











伏黒恵
なっ…!?
安室透
え…












驚きで思わず口から声が漏れた。











女子
…ほんっとに意味わかんない。
女子
ここまでされて、言いたい放題言われたのに
女子
何で何も言わないの?
女子
さっきからずっとシカトして…
女子
一人じゃ何も出来ないタイプ?
あなた
……












逆さにしたペットボトルを片手に、同い年くらいの女子がイライラしたような口調でそう言う。













月城さんの頭上で逆さにされたペットボトルの飲み口からはまだ水滴が垂れており、月城さんの髪やワンピースを茶色く汚していた。











女子
ねえって言ってるんだけど?
女子
何か言えっての。
あなた
……












どれだけ急かされても、月城さんは口を開かない。











伏黒恵
っ…












すぐ出入口に向かって外に出る。













それと同時に女子の大きな舌打ちが聞こえてきた。











女子
そーやって黙ってても
女子
男が勝手に近寄って来てたんでしょ?
女子
自分じゃ何もしなくて、こういう時でも男に助けてもらってたんだ?













女子の言葉に足が止まる。











安室透
……














続いて来た彼も、俺の後ろで立ち尽くしていた。











伏黒恵
……












今出て行けば…確実に月城さんの立場が無くなる。













月城さんを傷つける言葉を…今以上に悪意のある言葉をぶつけてくるに違いない。













そんな事はしたくない。傷つけたくない。













ならどうする。













男の俺や彼が介入せず、月城さんを助けるには…











女子
っ…マジでウザいし何なの!?












すると突然、女子が周囲の目も気にせず声を荒らげた。












女子
ぽっと出のくせに…!!
女子
私はずっと片思いしてたのに…!!
女子
一人じゃ言い返す事も出来ない、臆病でつまんないアンタが!!
女子
人より可愛いからって理由で選ばれて!!
女子
私がフラれて!!












女子は月城さんに向かって怒鳴りながら、涙を流し始める。













…女子の話から推測するに、好きな相手が月城さんを好いているからフラれて、こんな事をした…という事だろう。











伏黒恵
(…何だよそれ。)












身勝手にも程がある。八つ当たりの度を超えている。













怒りでもう間に介入しようとした、その時だった。











女子
私は可愛くなろうと努力して!やっとここまできたのに…!!
女子
努力したわけでもないのに…可愛いってアンタが選ばれて…!!
女子
ふざけ__
あなた
はぁ?












今まで何も言わなかった月城さんが、低い声を発した。













パンっと乾いた音を上げながら、頭上のペットボトルを振り払う。










あなた
…誰が努力してないって?












月城さんは濡れた髪を掻き上げると、目の前の女子を睨みつけた。











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