毛利さんはすぐタオルを手にポアロへ戻って来た。
有難くタオルで髪などを拭きながら訊くと、毛利さんは「毛利小五郎って知りませんか?」と訊いてきた。
「彼女だし!」と鈴木さんは毛利さんと楽しそうに目を合わせて笑い合う。
すると私が口を開いた途端、その声は毛利さんによって掻き消された。
つい"コナン君"という言葉に脳が「この場から離れろ。」と命令してくる。
早口で言い切り、伏黒君の手を引いて店内から出て行こうとした。
カランコロン。
するとその時、出入口のドアが開いてお客さんが入って来た。
…どうやらこの男性が毛利さんのお父様らしい。
逃げようと思ったが、毎度毎度どうしてこんなに上手くいかないのだ。
男性の後ろから、コナン君がひょっこりと顔を出した。
死んだ目で目を丸くしているコナン君を見る。
するといきなり男性が目の前に迫って来て、そのまま流れる様に空いている方の手を握られた。
ぶわっと鳥肌が立つ。
ましてや初対面、自分の父親世代が相手なんて、以ての外だ。
パシっ。
すると誰かが横から男性の手を掴む。
ハッとして顔を上げると、伏黒君が思いっきり男性を睨んでいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!