カランコロン。
後ろでドアの開く音がし、カウンターに立っている安室さんが「いらっしゃいませ。」と顔を上げた。
すると安室さんの目が輝き始める。
その声に私と、私の隣に座っていた園子も目を輝かせて振り向いた。
すると園子が途中で口を止める。
園子の視線を辿り、私も驚いた。
あなたさんの後ろに彼が立っていたから。
あなたさんが前に可愛いと写真を見せてくれた…伏黒という男性が。
園子は動揺したまま、あなたさんにそう訊いた。
あなたさんがそう紹介すると、彼は顔を上げて「…どうも。」と会釈をする。
ぎこちなく私と園子は会釈を返した。
するとすぐに園子が耳打ちをしてくる。
止める間もなく、園子は本当にそう口を開いた。
そんな問にあなたさんは、どうしてそんな事を聞くのかと不思議そうな顔をする。
園子は笑顔でそう返すと、再び私に耳打ちをした。
はしゃいでいる園子とは逆に、私は落ち込み気味の声が出る。
「でも決まった訳じゃなくない?」と言うだけ言ってみた。
園子はしゃいだまま、あなたさんにそう伝える。
するとあなたさんの後ろに立っている彼が、不思議そうな表情を浮かべた。
言いにくそうなあなたさんに代わり、園子が彼にそう教えた。
少しの時間が経った後、彼は小さく声をもらした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!