罵羅門のメンバーがみんな倒されて、あたりはしんと静まり返った。
高田くんの声に、はっと我に返る。
ホッと胸をなで下ろした高田くんに、蛍くんがぼそっとつぶやいた。
そのとき、向こうからひときわうるさいバイクの音が近づいてきたと思うと、
一豊くんの派手なバイクが突っ込んできた。
一豊くんがすぐに駆けつけて、蛍くんの顔を見ると、
一豊くんの言葉に、蛍くんはムキになって反論した。
すると、また向こうから、暴走族らしいバイクの音が近づいてくる。
工場に入ってきた三台の派手なバイクに、緊張が走る。
いかつい三人がバイクを降りて、こちらに向かって歩いてくる。
それを見た蛍くんは、さっと私をかばうように前に立った。
危険な雰囲気の三人に、蛍くんに身を寄せて様子をうかがっていると、
一豊くんが息をのんだ。
蛍くんはそれを聞いて、とっさに構えた。
三人は私たちの前まで来ると、長い髪をひとつに束ねた、彼らの中で一番大きな男の人が口を開いた。
目の前に立っただけで、怖くて泣きそうだ。
鉄男くんよりもさらに大きくて、筋肉のつき方がハンパない。
鋭い眼光からも、不良達を取りまとめる立場の人物だということがうかがえる。
けれど、蛍くんはひるむことなく、罵羅門の総長を見据えた。
蛍くんはそう言って身構えたけれど、
罵羅門の総長は、蛍くんの横を通り過ぎて、榎本くんの方へと歩いていく。
蛍くんは肩透かしをくらって、罵羅門の総長を目で追う。
すると、罵羅門の総長は、倒れている榎本くんのお腹を、いきなりドカッと蹴り上げた。
私たちは、その光景に目を見開いた。
気絶していた榎本くんは、突然の攻撃に意識を取り戻す。
罵羅門の総長は、倒れていた榎本くんの胸ぐらをつかんで、上半身を持ち上げた。
そう言って、榎本くんに容赦ないパンチをくらわせた。
罵羅門の総長は怒りにまかせて、榎本くんの髪の毛をつかみ上げると、頭突きを食らわせた。
額から血を流しながら、榎本くんはがくりとうなだれる。
そう言って、軽々と榎本くんを肩に担ぎ上げると、こっちに向かって歩いてきた。
蛍くんの言葉に、罵羅門の総長は、少しだけ表情を緩めた。
蛍くんの言葉に、罵羅門の総長は口の端を上げて笑った。
そして、罵羅門の総長は榎本くんを担いだまま、仲間を引き連れて廃工場をあとにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!