BLUE MOMENTのメンバー達がわっと蛍くんを囲んで、歓喜の声を上げた。
蛍くんの姿を見れただけで、胸がいっぱいになって、涙があふれた。
鉄男くんの声に、蛍くんがはっとして私を見た。
蛍くんが、こっちに向かって走ってくる。
あんなにも会いたくてたまらなかったのに、いざ本人を目の前にしたとたん、言葉が出てこない。
私の言葉に、蛍くんは苦しげに目を細めた。
考えてみたら、別れた彼女がこんな所まで押しかけてきたら、迷惑でしかない。
泣くのを必死でガマンしながら、急いで帰ろうとすると、
蛍くんが、後ろから呼び止めた。
振りかえると、蛍くんは私に手をさしのべて言った。
私は言葉を失って、差し伸べられた蛍くんの手を見つめた。
そう言って、蛍くんはもう一つの手で、自分の胸をトンと叩いた。
胸がいっぱいになって、言葉よりも先に身体が動いた。
私は蛍くんの手を取ってぎゅっと引き寄せると、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
そして、蛍くんもきつく私を抱きしめ返してくれる。
耳元でささやいた蛍くんの言葉に、胸が甘くしびれた。
すると、どこからともなく、パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。
一豊くんに言われて、蛍くんはぱっと私から離れた。
けれど、一豊くんにつられて、あちこちから拍手が沸き起こり、ヒューヒューと口笛まで飛び交って、猛烈に恥ずかしくなってくる。
蛍くんがムッとして言うと、周りのメンバー達はあわてて拍手をやめて、そしらぬ顔をした。
蛍くんはそう言って、ブラック・スネークの総長の元へと向かった。
蛍くんは驚いて私を見たけど、やがてふっと目を細めて言った。
蛍くんはうなずいて、また歩きだした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。