第26話

そばにいさせて
4,526
2022/11/05 23:00
BLUE MOMENTのメンバー1
総長!
来てくれたんすね!
BLUE MOMENTのメンバー2
総長、心配してましたよ!
BLUE MOMENTのメンバー達がわっと蛍くんを囲んで、歓喜の声を上げた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
しばらく顔見せなくて、悪かったな。
……もう大丈夫だ
佐々木 一豊
佐々木 一豊
手間かけさせやがって。
先週の分まで、今日は夜通し走るからな!
BLUE MOMENTのメンバー1
いいっすね!
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(蛍くん……!)
蛍くんの姿を見れただけで、胸がいっぱいになって、涙があふれた。
馬場 鉄男
馬場 鉄男
総長!
妃奈乃さん、来てますよ
鉄男くんの声に、蛍くんがはっとして私を見た。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃……!
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くんが、こっちに向かって走ってくる。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(どうしよう、何を話せばいいの?)
あんなにも会いたくてたまらなかったのに、いざ本人を目の前にしたとたん、言葉が出てこない。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃、どうしてここに……?
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くんに会いたくて……
私の言葉に、蛍くんは苦しげに目を細めた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
こんな所に女の子一人で来たら、危ないだろ
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
ご、ごめんなさい……
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(どうしよう、迷惑だったかも……)
考えてみたら、別れた彼女がこんな所まで押しかけてきたら、迷惑でしかない。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
勝手に来ちゃって、ごめんなさい。
蛍くんのことが心配だったけど、こうして無事な姿を見れたから……、もう帰るね
泣くのを必死でガマンしながら、急いで帰ろうとすると、
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃
蛍くんが、後ろから呼び止めた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
え?
振りかえると、蛍くんは私に手をさしのべて言った。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃、
これからも俺と一緒にいる覚悟があるのなら……、
この手を取れ
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
私は言葉を失って、差し伸べられた蛍くんの手を見つめた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
俺は妃奈乃と一緒にいるべきなのか、……まだ迷ってる
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
けど、それでも妃奈乃が俺と一緒にいたいと言ってくれるなら、俺も覚悟を決める
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
覚悟……?
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
俺は、必ず妃奈乃を守り抜く
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
たとえ、この命に代えてでも
そう言って、蛍くんはもう一つの手で、自分の胸をトンと叩いた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん……!
胸がいっぱいになって、言葉よりも先に身体が動いた。

私は蛍くんの手を取ってぎゅっと引き寄せると、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
覚悟なんて、とっくにできてる
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
お願い、一緒にいさせて……!
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃……
そして、蛍くんもきつく私を抱きしめ返してくれる。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……もう、二度と妃奈乃を離さない
耳元でささやいた蛍くんの言葉に、胸が甘くしびれた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
……うん
すると、どこからともなく、パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。
佐々木 一豊
佐々木 一豊
よっ、総長!
見せつけてくれるじゃん?
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
!?
一豊くんに言われて、蛍くんはぱっと私から離れた。

けれど、一豊くんにつられて、あちこちから拍手が沸き起こり、ヒューヒューと口笛まで飛び交って、猛烈に恥ずかしくなってくる。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(私ってば、みんながいる前で、なんて大胆なことを……!)
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
おい、見せ物じゃねーぞ
蛍くんがムッとして言うと、周りのメンバー達はあわてて拍手をやめて、そしらぬ顔をした。
佐々木 一豊
佐々木 一豊
蛍、そろそろ時間だ。
あちらさんが待ってるぜ
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
ああ。
挨拶してくる
蛍くんはそう言って、ブラック・スネークの総長の元へと向かった。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん!
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
ん?
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
私も……、一緒につれてって
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
え?
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
私も、蛍くんの世界を見てみたい
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃……
蛍くんは驚いて私を見たけど、やがてふっと目を細めて言った。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……わかった
蛍くんはうなずいて、また歩きだした。

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