第18話

オコジョちゃんの逆襲
5,093
2022/09/10 23:00
高田 肇
高田 肇
榎本くん!
ナ、ナイフなんて出して、
何を考えてるんだっ!?
榎本 冴己
榎本 冴己
BLUE MOMENTの総長を倒せれば、この際なんだっていいんだよ
そう言って、榎本くんはナイフをギリギリまで私の鼻先に近づけた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
榎本くん、やめて……
榎本 冴己
榎本 冴己
……彼女が怯えてるよ
榎本 冴己
榎本 冴己
どうする? 総長さんよ
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……何が望みだ?
蛍くんは苦々しくつぶやく。
形勢が逆転して、榎本くんは勝ち誇ったように笑った。
榎本 冴己
榎本 冴己
おまえを倒して、BLUE MOMENTを俺の傘下に入れる
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
なんだと?
榎本 冴己
榎本 冴己
けど、その前にやることがある。
……両手を挙げて、そこにひざまずけ
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
榎本 冴己
榎本 冴己
早くしろ
蛍くんは言われたとおり、両手を挙げてひざまずいた。
榎本 冴己
榎本 冴己
今のうちに、奴を捕らえろ!
罵羅門のメンバー6
ハイ!
罵羅門のメンバーが、後ろから蛍くんを羽交い締めにした。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん……!
榎本 冴己
榎本 冴己
これまで誰も傷つけたことがない、そのキレイな顔をボコボコにしてやるよ
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
えっ!?
榎本 冴己
榎本 冴己
亮司、やっちまえ!
罵羅門のメンバー2
っしゃ!
スキンヘッドの大男が、拳をバキバキ鳴らすと、蛍くんに思い切り拳を振り上げた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
がはっ……!
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん!!
大男のパンチをくらって、蛍くんの白い頬は、みるみる赤く腫れ上がる。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……っ
蛍くんは大男をにらみつけて、ペッと口の中の血を吐き出した。
罵羅門のメンバー2
まだまだぁ!
調子づいたメンバーは、さらに蛍くんの顔に強烈なパンチを入れた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
ぐふっ……!
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
や、やめて……!
私は震えながら、小さな声でつぶやくことしかできなかった。
榎本 冴己
榎本 冴己
はっはー!
どうだ、初めて顔を殴られた感想は?
蛍くんの姿に、榎本くんは狂ったように笑い出す。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
くっ……!
蛍くんは腫れ上がった顔で、榎本くんをギロりとにらみつけた。
榎本 冴己
榎本 冴己
いいザマだな。
じっくりといたぶってやる
後ろから聞こえてくる榎本くんの狂気じみた声に、怒りがこみあげる。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(……これ以上、榎本くんの好きにはさせない!)
私は、強い気持ちで自分を奮い立たせると、チャンスを待った。
榎本 冴己
榎本 冴己
二度と、イケメン総長なんて言えない顔にしてやる!
榎本くんが調子に乗って大声をあげた瞬間、
私をつかむ腕の力が緩んだ。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
(今だ!)
私は榎本くんの手首に、がぶっと噛みついた。
榎本 冴己
榎本 冴己
いってぇ!!
いきなり噛みつかれて、びっくりした榎本くんは、反射的に手を引っ込めた。

榎本くんの手が離れた隙に、私は蛍くんの元へと走りだす。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
蛍くん!
榎本 冴己
榎本 冴己
あっ!?
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃!
私が解放されたのを見た途端、
蛍くんは、自分を羽交い締めにしていた男の首を後ろ手でつかむと、そのまま体をひねって、男を投げ飛ばした。
罵羅門のメンバー6
ぐはっ!
投げ飛ばされた男は、そのまま地面に叩きつけられて、気絶した。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
次はおまえだ
罵羅門のメンバー4
ひえっ!
そばにいた男は、蛍くんと目が合っただけで、恐れをなして逃げ出した。
罵羅門のメンバー5
お、俺もこんな奴と戦いたくねーよ!
高田くんを捕らえていたメンバーも、ここぞとばかりに逃げていく。
榎本 冴己
榎本 冴己
おい、待てよ!
榎本くんが呼び止めても、誰も戻らない。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃!
蛍くんは私の元へと駆け寄り、ぐっと私を抱き寄せた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃、大丈夫か?
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
うん!
蛍くんは心配そうに私を見つめて、言った。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……どこも怪我してないか?
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
大丈夫だよ。
私よりも蛍くんの方が……
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
俺のことはいい。
妃奈乃が無事なら……
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
蛍くんが、はっと顔を上げた。
榎本 冴己
榎本 冴己
俺は……、
こんなところで負けるわけにはいかないんだぁぁぁ!
振り返ると、榎本くんが半狂乱になりながらナイフを振りかざしていた。
森下 妃奈乃
森下 妃奈乃
!!
私は蛍くんの腕の中で、ぎゅっと身を縮めた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
妃奈乃に、こんなモン向けんじゃねぇ!!
蛍くんは私を腕に抱きながら、榎本くんが振りかざしたナイフを見事に蹴り上げる。
榎本 冴己
榎本 冴己
……つっ!!
カチャンとナイフが地面に落ちる音がした。
榎本 冴己
榎本 冴己
あ……
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……お前だけは、許さねえ!
蛍くんはそのまま、榎本くんの顎に強烈なアッパーを打ち込んだ。
榎本 冴己
榎本 冴己
があっ……!!
榎本くんの体が宙に浮き、やがて地面に倒れた。
小鳥遊 蛍
小鳥遊 蛍
……お前の負けだ
蛍くんの言葉に、榎本くんが答えることはなかった。

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