自分でも驚くほどの低い声に、雷も樹も驚いた顔をした。
落ち着け、私。
そう唱えれば唱えるほど、心は苦しくなっていく。
奈緒の死体を見て息を詰まらせ、しゃがみこんでしまった佐々木さんに田河さんが駆け寄る。
初宮くんもきて、あと来ていないのは相田くんだけ。
…ん、ていうか、なんでゆりあは、奈緒の部屋に来ていたの??
私の中で浮かび上がって来た、ほんの少しの疑問はやがてひどく醜いものに変わっていく。
…、、、ゆりあが人狼で、わざと悲鳴をあげた…??
私は樹に心配をかけたくなくて、雷にそっと耳打ちする。
雷は目を見開いて驚いた顔をしたが、すぐにいつも通りの顔に戻った。
私はすぐに首を振る。
奈緒をベットに寝かせ直すと、私たちは各自、探索をしたり、部屋に戻ったりした。
私は雷にこっそりと、『あとで部屋に来て。』と言って、『一緒にいようか?』という樹には断りを入れた。
ごめんね、樹。
樹にだけは迷惑をかけられないから、私。
心配そうな顔をしている雷を見て、私はどうしたものかと考えてしまう。
雷は市民だよね?
直球に聞いてしまった質問に、嫌な顔をせず、雷は答えてくれた。
嘘…な訳ないよね。
違う、違うの!!
…違う、くはないけど違うの。
叫んだのも自作自演じゃないかなって。
そう考えるとね、誰も信じられなくなってってちゃったの。
雷のことが信じられないとかじゃなくて、自分がどうしたらいいのかわからない。
…全部を思いの丈に話した。
雷はずっと聞いてくれて、頷いてくれた。
勝ちたいの?はイコール、誰かを殺してまで生きたいの?という意味。
…だよね?
そんなの、そんなのわかんない。
でも。
決意は固まったよ?多分だけど、うん。
雷は良かったと、言うと、部屋から出て行った。
私は一人で心を落ち着かせる。
どうすべきか。
生きるためには、奈緒の分まで生きるためにはどうすることが最善か。
頑張らないと。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。