パチ…
私は、天蓋付きベッドから
転げ落ちると着ていたシルクのパジャマを
床に脱ぎ捨てた。
私は、顔を真っ青にして
床に崩れ込む。
今日は、初めて優くんやまどかさん
ちひろさんとの、遊園地に行く
約束をしていた日だったのに…
私は、怒り気味に
使用人兼私のお世話係のエレナに
向かって叫んだ。
私の家は、裕福と言えば裕福
使用人も数人いて、エレナは、20歳と
いう若さで、ここの屋敷の責任者でもある。
だから、私の一番のお目付役で監視役なのだ。
エレナと出会ったのは、私がまだ
小さかった時だった…
私は、父に連れられて
花が咲き誇る大庭へと連れてこられた。
そして、そこに待っていたのは…
お父様は、それだけ言い残すと
私に背を向けて扉に向かって歩き出した。
パチン
お父様が指を鳴らすと、エレナが
私の元に駆け寄り優しく手を握りしめて
くれた。
私の手を握って微笑んだ
エレナの瞳は、透き通った薄い緑色だった。
吸い込まれそうなほど綺麗な瞳は、あの時
少しだけ涙が滲んでいた気がする。
後から聞いた話だけど、エレナのお父さんは
株に手を出して失敗し、その後会社が倒産。
そしてエレナを置いて、ある日突然
家を出て行ってしまったそうだ。エレナの
お母さんは、早くに亡くなっていた事もあり
昔お父様の元でNo.2として働いていた
エレナのお父さんに免じて、彼女をこの屋敷の
主に私専属の使用人として引き取ったらしい。
エレナは1人だった。家族もいない
知らない場所に来て…きっと
すごく心細かったハズ…
そんな事情は、小さかった私には
理解する事なんて出来なかった。
ティロン♫ティロン♫
ピッ-
スマホをタッチすると
電話を取った。
ダメ、ダメ‼︎
せっかく優くんと休みの日に
会えるチャンスなんだから!
逃したくない。
優くんと、会いたいがために…
気付けば私はそう口にしてしまっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。