ここは、都会じゃないから
待ち合わせをするのに良い場所が
いまいち見つからない。
そんなここでも、待ち合わせをよくする
オススメ?の場所に最適な所が
ある。そう…駅から近い場所にある
小さなお寺の幹の前。
大きい松の巨木がズーンと
立ち構えている場所だ。
Tシャツに、黄色のパーカー
そして黒のチノパン。
明らかに、オシャレとは
ほど遠い僕の私服。
14時になる少し前に、僕は、松の木の
前に着いた。
僕は、少しの間
翔に教えてもらったゲームの
事でも、考えていようと思った。
タイトル
「騎士団と封印のドラゴン」
スマホの、オンラインゲームアプリで
無課金でそこそこ楽しめるのが、人気の
理由だそうだ。
タイトル画面は、こんな感じ。
主に戦って、チャットをしたり
協力プレイをするゲームのようだ。
コレで、フレンドになった
メロさん…?だっけ。
彼女と意気投合して、同じ県に住んでいて
歳も近いことから、会ってみようなんて
思ったわけだ。
ジャリ…
小石が崩れる音がして
後ろを振り替える。
ビュオーと強い風が吹き
メロさんの長いスカートが
揺れた。
風に吹かれて、メロさんの良い匂い
が流れてきた。
ニコっと微笑んでみた。
メロさんは、僕の方を見て
クスクスと笑う。
まさか、早速僕が
翔じゃないことがバレたのか
と思い、唾を飲み込んだ。
翔の口癖とか、頭に入れて
おくべきだったな…
よし、次からは俺で行こう。
多分、場所とか移動するときに
使うゲーム特有の専門用語に違いない。
これぐらい、僕でもわかる。
あなどるなよ。
スマホを取り出し、昼時に
空いてそうなお店を検索してみるが、
なかなか良い場所を探せない。
ドドドっ
急に褒めないでくれ…心臓の鼓動が早くなる。
僕だって、そんなに褒め慣れてる
わけじゃないんだぞ?
無意識に、僕のライフを削ってくるとは。
大きな目を、ぱちくりとさせ
下から上へと視線を動かすメロさん。
好きですよ
好きですよ
好きですよ
ときめきワードで
優に−20のダメージ➡︎
僕は、拳を強く握りしめ
これを言うことが、精一杯だった。
ああ…カッコ悪いなぁ。そうです。
僕は、ヘタレです。女の子と
いるだけで、すぐにドキドキ
しちゃうような奴だけど…
このまま、彼女と何もしない
わけにはいかないでしょ。
せめてうまいもの食って、少し
喋ったら帰ってくれるかな。
ギュッと、腕を掴まれ
走り出す僕たち。
頬が、ピンク色に染まってきた
僕と…元気はつらつで
いざ冒険の第一歩を踏みだしなような
顔をしているメロさん。
僕のミッションが、今…
スタートした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。