第18話

言葉の後悔
107
2018/09/19 10:46
ザッザッと、地面を擦って歩く音が蒼唯の頭近くで
足音は止まった
蒼唯
蒼唯
誰……だよ
凜
夏夢の……怒鳴り声、聞こえたから
不安に思って戻ってきた。
ーお前、熱だしてるんだろ?
無理してんじゃねーよ
彼女を逆に困らせてどうすんだ
蒼唯
蒼唯
宇賀辺……先輩か……
はは……まさか不良に心配……
されるなんて……な
……て、うわっ!?
いきなり体が宙に浮きビックリする蒼唯
凜
じっとしてろよ
ー重たいし。
凜は軽々と蒼唯を持ち上げた
蒼唯
蒼唯
なっ……なにすんだよ!
てゆうか、なんでオレが風邪だって…
凜
冷えピタ、剥がし忘れてるし
ー案外アホなんだな
そう言いながら凜は蒼唯の家に入り込む
蒼唯
蒼唯
ちょっ……オレん家に勝手に……
凜
病人は、黙ってろ
ーお前、風邪引いてから
ろくなもん食ってないだろ
た、確かにそうだー。
両親はいない……仕事が忙しくて帰ってくることは
少ないし、緑は相変わらず引きこもっている
そのため、料理するのはオレだ
風邪を引いてオレが寝込んだら
ー誰も、料理なんて作る人がいない……
凜
キッチン、借りるぞ
蒼唯
蒼唯
はっ……?
ちょっ……勝手に……!!!
何やら騒がしく思ったのか、日葵が下へ降りてきた
日葵
日葵
蒼唯……って宇賀辺……さんが
ど、どうしてここに……
つーか駒井ちゃんは?
凜
そこのお前、コイツ寝かせてやれ
ー熱が上がってきてる。
凜は何かを調理しながら日葵に言う
日葵
日葵
わ……わかりーました……
日葵は、蒼唯を支えながら二階に上がっていく
日葵
日葵
な、なんで宇賀辺さんがいるんだよ!
蒼唯
蒼唯
倒れた……オレを助けてーくれた……
少しムッとしながら答える蒼唯
恋のライバル、だと言っても助けられるなんて
みっともないし……。
蒼唯の部屋に入ると心配そうな顔を浮かべた苑梨が
立ち上がった
苑梨
苑梨
飯本っ……勝手に飛び出したら
ダメでしょ……!!
まだ熱も下がってないのに……
ー夏夢……は?
蒼唯
蒼唯
ーオレの……せいだ……
オレがあんな嘘、宇賀辺先輩の
前でついたから……夏夢が……
怒って……どこかに……。
それを聞いた苑梨は怒りを隠せずにいた
苑梨
苑梨
なんでっ……!?
ーバカなの、飯本っ!!!
アンタ……夏夢が好きなんでしょ?
なら……夏夢の大切さもわかるでしょ
ーなんで……止めなかったのよっ!?
蒼唯
蒼唯
止めようとした……でも
日葵
日葵
瀬戸川、そんなに責めるなって
ー蒼唯だって止めたかったはずだよ
でも今は病人って事を忘れないでよ
何かを言いたそうな苑梨は黙り込む
日葵
日葵
言いたいことがあるなら
はっきり言えよな?
苑梨
苑梨
ー……飯本、お前に聞く
夏夢に、どんな嘘をついた?
蒼唯は、少し間を開けると話始めた
蒼唯
蒼唯
ー夏夢だけじゃない
宇賀辺先輩にも嘘をついた……
オレが夏夢の彼女って言う嘘
そして……嘘じゃないけど
夏夢に二度と近づくなって言った……
蒼唯は今にも泣きそうな顔をしている。
ー好きな人を傷つけ、好きな人の好きな人もを
嘘で好きな人から遠ざけようとした
ー罰を受けても、いいくらいだ。
最悪な罪を犯したよ、オレは。

なんで、あんなこと言ったんだろうか
ー今から後悔しても、遅いってわかっているのに

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