第19話

不安の心、暖かい心
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2018/10/01 13:31
ただ、ひたすら何処かもわからない場所を目指して
走っていた
夏夢
夏夢
はぁっ……はぁっ……はぁっ!!
うぅっ……くっ
泣きそうになりながらも、我慢して。
そういや、クッキー渡そうとしてたんだっけ?
ーもう……なんでもいいや……。
夏夢
夏夢
……先輩……誤解…なんだよ……?
ー私、彼氏なんていない……
ー好きなのは先輩だけだよ……?
凜から返されたTシャツを抱き締めて。
たどり着いたのはどこかもわからない公園
ー静かにブランコに座りTシャツに顔を埋めて
涙を流す
夏夢
夏夢
うぅぅっ……
どうしよう、本当にもう先輩に会えなくなったら
もう、それだけが不安で、不安で……仕方がなかった
私のー恋……返してよ……ねぇ
公園で一人泣いていたときだったー
誰かが、こちらに近づいてきた音、がしたー
……………………………………………………
蒼唯
蒼唯
はぁ…………もうやだ
苑梨
苑梨
いきなりネガティブ思考ね……
そんな男はモテないわよ
蒼唯
蒼唯
好きな子に好かれなきゃ意味ないし
ーはぁ……戻れるなら……戻りてぇ
ベッドに横たわり安静にするが、夏夢のことで
頭がいっぱいになって寝れない。
それにー、一階にはなぜか宇賀辺先輩がいるし
すると、ドアをノックする音が部屋に響いた
苑梨
苑梨
はいっ……って……う、宇賀辺先輩
ーどうしたんですか……それ
苑梨は、ドアを開けると立っていた凜に驚く
凜の手には、少し手の込んだお粥があったのだ
凜
どうしたって……作ったんだよ
ー悪かったか?
コイツ、ロクなもん食ってないって
……言ってたから。
凜は、日葵にお粥を渡すと部屋を出ていこうとした
それを、止めたのは蒼唯だった
蒼唯
蒼唯
まって……
凜
病人は黙って食うか寝てろ
蒼唯
蒼唯
違……う!
ーさっきのこと……全部……嘘っだから
オレは……彼氏でも……なんでも……ない
ー夏夢に……必要なのは……先輩……だ
すると、凜は黙り混み間をあけて言った
凜
ーそう……か
蒼唯
蒼唯
……ありがとうございます……
えっと……お粥……。
凜はなにも言わずに部屋を出て、家を出た
日葵
日葵
まっ、ほら蒼唯口開けて?
お粥、食わせてやるよ
暖かいうちにな!!
日葵はいきなり蒼唯の口にお粥を突っ込むと
蒼唯はむせかえる
蒼唯
蒼唯
うっ……げほっげほぉっ!!
お、おまっ……!!
あっついんだよ!!
……でも……
苑梨
苑梨
でも……?
蒼唯
蒼唯
不良のくせに……凄く美味し……
蒼唯は笑って言った
苑梨
苑梨
なんかさ……すこしあの宇賀辺って
奴のことの見方、変わっちゃうかも
まぁ、ちょーっとだけど
苑梨が言うのもわかる。
ーあの人は不良なのに心があって、心は暖かくて
ーとても……優しかった。
ちょっと、ぶっきらぼうな少年って感じ。
蒼唯
蒼唯
夏夢は諦められない……
だけど先輩になら……良いかなって
思った……かも。

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