第10話

前から呼びたかった
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2018/08/24 02:49
夏夢の降りる駅にやっと到着し、満員電車の人を
押し退け無理やり外へ出る
蒼唯
蒼唯
ぐはっ……!!
息苦しかった……なんか凄く
外の空気がキレイに思えるな…
夏夢
夏夢
ほ、本当だよね……。
満員電車って嫌い……だなぁ
無駄に汗をかいてしまった。
そのため少し汗が冷えてきた体が既に日が暮れた
ことによって気温は低くなり寒気がする
夏夢
夏夢
へへっ、ちょっとだけ
寒くなってきたね
ちょっと自転車持ってくるね
夏夢は照れ臭そうに笑うと自転車置き場に自転車を
取りに行った
蒼唯
蒼唯
くそ……何も持ってねぇよ
はぁ……今日帰るのが遅くなるって
わかってりゃなにか羽織るもの
持ってきたのに……。
夏夢が寒いって言っているし風邪を引いて
しまったら、完璧にオレのせいだ。
夏夢のことは……守りたいのに。
夏夢
夏夢
飯本くん……?
何悔しそうな顔してるの?
あ、もしかして飯本くん寒い?
蒼唯
蒼唯
え、オレそんな顔してた?
ー寒いっちゃ寒いけど我慢は
出来るくらいだな。
そう答えると、夏夢はいきなりカバンのなかを
探りだし何かを取り出すと蒼唯に渡した


ー淡い青色のパステルカラーのパーカー。
夏夢
夏夢
はい、これ着て?
飯本くん風邪引いちゃったら嫌だから
それに、家まで送ってくれたし
きっと飯本くん帰るのもっと遅くなる
からもう少し寒くなると思うから。
蒼唯
蒼唯
え、いや駒井ちゃんが着てよ
さっき寒いっていってただろ?
オレは気にしなくて良いし
送って帰るって言ったのも
オレが決めたことだしさ。
蒼唯はパーカーを夏夢に返すが夏夢は蒼唯の胸元に
グィッとパーカーを押し渡す

道は暗くて、街灯だけか頼りだ。
そして自転車を押す音が夜に響いている
蒼唯
蒼唯
ちょっ……
夏夢
夏夢
着てっ!!
私の家、もうすぐ着くから平気だよ
あっ、私のパーカー嫌だったら
お父さんの貸すよ?
蒼唯はハッとする。
好きな女の子のパーカーを着れるなんてカレカノ
しかできないことだ。
それをー彼氏でもない状態でできる
このチャンスを逃すわけには……!!ーと。
蒼唯
蒼唯
じゃあ、お言葉に甘えて
借りようかな……?
ありがとう
蒼唯は夏夢のパーカーを受け取り微笑む
こんなに……嬉しいことはない、と心の中で叫ぶ
夏夢
夏夢
あっ、ここが私の家だよ
ー送ってくれてありがとう
夏夢はお礼をすると家のドアノブに手をかけた
蒼唯
蒼唯
駒井ちゃんっ!!
夏夢
夏夢
……ん?
どうしたの?
夏夢はドアノブに手をかけたまま振り向いた
ーつい……呼び止めてしまった。
本能で、もっと駒井ちゃんと一緒にいたいって
思ってしまった。
蒼唯
蒼唯
あ、あの……いや……そ、そうだ!
なぁ、駒井ちゃんのこと夏夢って
呼んでもいいか!?
もう、『またね』っていって手を降るつもりが
気づいたら、言葉を発していた。
前からずっと思っていた、“夏夢”って呼びたかった
夏夢
夏夢
あははっ……飯本くんって
ちょっと変な人、だね♪
好きに呼んでくれていいよ
ーじゃあ、また明日
夏夢はそう言って笑うと、家の中に入っていった
蒼唯
蒼唯
ーっ……!!!よっしゃっ!!
夏夢って、呼べるんだなっオレも!
ガッツポーズをして喜ぶ蒼唯
夏夢に貸してもらったパーカーを羽織い夜の道を
一人、歩いて帰った

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