【倫太郎side】
『分かった。じゃあ、赤の他人?』
その言葉にすぐ首を縦に振ることができなかった
頭では振ればいいと言っている
しかし、心が振りたくないと言っている
なんだよ、これ
赤の他人が嫌なのか?
別にいいだろ
俺は元々人付き合いが得意な方ではないし
好きでもない
なのに…
『ちょっと、どうしたの?ねぇ、大丈夫?』
溜まりかねてアイツが言う
自分でも「どうした」か分からない
でも、…これは
いや、違う
家族なのに赤の他人をするのが少し悲しかっただけだ
ただ、それだけだ…
俺はそう思うことにした
母「あなた達ー!もう寝なさい」
お母さんが言った
時計を見るともう10時だった
『あ、はーい!…お休み』
アイツ「お休み」と言うだけで少し鼓動が早くなる
別に察しが悪いわけじゃない
でも、こんなこと思ってどうする?
未完成とはいえ、もう家族だ
俺のこんな思いで台無しにしたくない
叶わないならば深くなる前に諦めなければいけない
「あぁ、お休み」
そう言って、何も考えずに寝た
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!