いや、今のは怒ってしまってたか。
両手でいっぱいに私を抱きしめて、
嫌でもドクドクと波打つ心臓。
肩を軽く押したけど
逃がさまいと締め付けられる。
昨日のちょっと強引なソクミン先輩がまだ
どこかに隠れてる。
ようやく腕が解けたと安心すれば次は指が絡む。
…いいじゃん、言わないから。
表情にも見せないからドキドキしたって、、
いいよね?
揺れる指先が首筋を通っていく。
私は彼のネクタイの結び目を見て、
静かに息をした。
だって、どんどん引き寄せられる。
頬をその大きな手で包まれれば
ソクミン先輩が眉を下げて私を見つめている。
弱々しい声はわざと?
でも悲しい心の声にも聞こえる。
いい?
だめ
触れたい
でも、
意味もなく続くやり取り。
先輩の目に今映っている人は私で、
想っている人はイェソさん。
こんなの…
荒く触れて、ちゅっと吸われていく唇。
ほら、八つ当たり…
表情を見ればちょっとスッキリしている顔。
また私を抱きしめて首にすりついてきた。
甘ったるい言葉。
目眩がした。
好きなくせに、そうやって我慢して嘘ついて。
でも変だ私。
まさか、私、
奪えるかも
なんて思ってないよね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。