第24話

真っ暗な夢
89
2021/01/29 09:00
山本 凛星
あー……疲れた……
私は大きな背伸びをしてベッドに倒れ込む。
ここは私の部屋。今は皆で休憩中。
北嶋 花霞
本当、それね!インドア派には辛いわ~……
西川 恋
え、花霞ってインドア派?なんか意外。
吉岡 鈴華
にしても"あれ"はびっくりしたよねぇ……
鈴華が溜息をつき、先程運ばれてきた水を一気に飲む。
ちなみに私達はさっきまでロズリーヌさんの指導を受けてたから、多分その事かな?
北嶋 花霞
そうそう。いきなり「じゃあ、これ真似してね。」って細かい説明もなしに……
吉岡 鈴華
出来るかぁ!?ってなるわ。
花霞と鈴華は話で盛り上がっているようだ。
普段よりテンションおかしいのは疲れてるから、かな?
西川 結萌
ロズリーヌさん、思ったより教えるの下手っぴなんだね。
結萌ちゃんは盛り上がっている2人をみて苦笑いし、私のベッドに静かに腰掛ける。
山本 凛星
あの人どこか抜けてるからなぁ……
私は起き上がる気力もないのでベッドに突っ伏したまま、そう答える。
北嶋 花霞
てか、結萌ちゃん疲れてないの?めっちゃ落ち着いてるけど。
確かに、クタクタの私と鈴華と花霞に比べて、結萌ちゃんは全然息が上がっている様子もない。
恋は運動神経いいし、分かるけど。
西川 恋
確かに、この前走った時はすっごい息上がってたのに。なんかしてるの?
確かに、あの騒動の時は1番疲れていたような。
恋がそう聞くと、結萌ちゃんはちょっと笑って、
西川 結萌
まあね。私だって、やれば出来るんだからね?
裏で特訓でもしてたのかな?
なら誘ってくれればいいのに……こんなことになるなら喜んで参加してたよ……
頭でそう考えながら、1度深呼吸する。
山本 凛星
あーあ。結局聞きそびれちゃったな。
私は誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやく。
吉岡 鈴華
何、どうしたの?
私の様子を見て、鈴華が声をかけてくれる。
私は少し元気が出てきたので、「よっこらせ……」とかすれ気味の声で言いながら勢いをつけて起き上がる。
西川 恋
いや、ジジイかよ。
すぐさま恋がツッコミを入れてくる。
山本 凛星
せめておばあちゃんが良かったな?
そんな私達のやり取りを見て、他の3人がケラケラと笑う。
吉岡 鈴華
で、どうしたの?
鈴華が改めて私に聞いてくる。
山本 凛星
いやー、結局ロズリーヌさんが掴んだあっちの情報って何なのかなって思って。
私のその話を聞いて、花霞が「あ~!」と突然大きな声あげる。
西川 結萌
びっくりした……何?
結萌ちゃんがビクッと肩を震わせ、花霞にそう問いかける。
北嶋 花霞
思い出したの!昨日見た夢。
花霞が何かスッキリしたような顔でそう答えた。
西川 恋
もう、いちいち大声あげるなって。驚くだろ?
大声を上げた割には大したことない内容だった為か、恋の対応が素っ気ない。
北嶋 花霞
いやいや!ただの夢じゃないんだってば!
花霞は興奮した様子で立ち上がる。
北嶋 花霞
私、もしかして何かの力に目覚めたのかも~!
山本 凛星
は、はぁ……
1人で盛り上がっている花霞に戸惑いを隠せない。
西川 結萌
ねぇねぇ、どんな夢だったの?
結萌ゆめ」ちゃんが「ゆめ」について聞くというダジャレみたいな状況が出来上がる。
吉岡 鈴華
ちょっとちょっと、おもんないわよ凛星。
山本 凛星
……え?
まるで私の考えていることなんて見透かしているかのように鈴華が私に向かってそう言った。
吉岡 鈴華
え?……あれ、なんでだろ。
北嶋 花霞
ちょっとちょっと!話聞いてよね。
花霞がムッと少し怒った顔になる。
山本 凛星
あ、ごめん!
花霞は怒らせると怖いので、素直に姿勢を正して話を聞く体勢にする。
北嶋 花霞
それがさ、私が見た夢、多分予知夢なんだよね~!
さっきのムッとした顔から一転し、花霞の表情がパァっと明るくなる。
西川 恋
えー、偶然じゃね?
恋は半信半疑のようだ。
予知夢か……私は見たことないから分からないけれど、それってこの先起こることも全部分かるってこと?
北嶋 花霞
偶然な訳あるもんですか!なんならこの先起こることも分かっちゃうよ~。
あ、やっぱり分かるんだ。
西川 結萌
じゃあ、何が起こるの?
恋とは反対に、結萌ちゃんは信じてるっぽい。
北嶋 花霞
えっと、確かこの後はニコレットちゃんが……
花霞がそこまで言いかけた時、
ニコレット=デシャネル
あの、失礼しますよ~?
なんと、本当にニコレットちゃんが来たのだ。
吉岡 鈴華
え、マジで来たんだけど?
西川 恋
怖っ!?……いやでも偶然かもだし……。
山本 凛星
え、ヤバいって、マジじゃん!ヤバっ!
西川 結萌
凄い……!
北嶋 花霞
やっぱり本物じゃん!私も遂に……!
本人含め、皆騒ぐのでニコレットちゃんはとても困惑していた。
ニコレット=デシャネル
あ……皆さん、きっと疲れてるんですね。やっぱり後でにしようかな……
と、ニコレットちゃんが苦笑いで去ろうとするので皆で慌てて引き止めた。
ニコレット=デシャネル
……ところで、なんで騒いでいたんでしょうか?
ニコレットちゃんが私にそう聞いてくる。
山本 凛星
あ、それはね……
私が答えるより先に花霞が口を開く。
北嶋 花霞
私、予知夢見たんだ~!力に目覚めたのかも!
西川 恋
って言っても、まだニコレットが来ることくらいしか合ってないだろ?
恋にそう言われ、またもや花霞はムッとする。
北嶋 花霞
じゃあ、他のも当てる!「この後、ロズリーヌさんがここに来る」筈だよ。
西川 結萌
これで当たったら凄いよね……!
西川 恋
さあ、どうだろうな。
山本 凛星
なんかドキドキする……!
北嶋 花霞
ほらほら、静かに。
そうして皆口を噤む。
でも少ししてもロズリーヌさんが部屋に入ってくることは無かった。
吉岡 鈴華
……来ないけど。
そう言ってチラッと花霞の方を見る。
花霞は面白くなさそうに頬ずえをついている。
ニコレット=デシャネル
予知夢……ですか。
突然ニコレットちゃんが静かにそう言った。
ニコレット=デシャネル
ちなみに、どんな夢だったんでしょう?
それは丁度私も気になっていたところだ。
花霞は空中に目線を彷徨わせる。
内容を思い出しているようだ。
北嶋 花霞
えっと、私が起きるところから始まって、ロズリーヌさんに呼ばれて……
うんうん、確かにそこまでは今日あったことだね。
北嶋 花霞
で、そこから今の状況があるでしょ?……それでロズリーヌさんが部屋にきて何かの話をしてくれるの。
話?そこの内容は覚えてないのかな。
北嶋 花霞
ま、完全にうろ覚えなんだけどね。その後は覚えてないや。
話を終えた花霞はちょっと笑って目を伏せる。
北嶋 花霞
……でも、やっぱり恋が言った通り偶然なんだよね。ニコレットちゃんが来たのも。
それを見た結萌ちゃんが静かに立ち上がり、花霞の隣に行く。
西川 結萌
まあまあ……でもまだ偶然だって決まった訳じゃないでしょ?
そう言って花霞の背中を優しくさする。
西川 結萌
予知夢……とも言いきれないかもだけど。
それ言っちゃったら花霞もっと悲しむ気が……
北嶋 花霞
……あっ、でもでも!
花霞がぱっと顔を上げる。
北嶋 花霞
その夢、なんか変だなって思ったら、"声だけ"だったんだよね。
え、声だけの夢って何。
山本 凛星
そんな夢ある?
北嶋 花霞
さあね。ただ、本当に声だけ。真っ暗な中、声だけが聞こえるの。
それは変な夢だな~。
吉岡 鈴華
じゃあ、よく覚えてたね、そんな夢。内容とか全く記憶に残らなさそう。
鈴華が目を丸くする。
北嶋 花霞
まぁ、ちょっとしか覚えてないけどね。それでも……
花霞がそう言いかけた時、部屋の扉が開いた。
ロズリーヌ=アライス
……そう言えば忘れてたんだけど……って全員揃ってるのね。
ロズリーヌさんは相変わらず無表情。
って……
西川 恋
良かったな花霞、夢当たってるぞ。
え、本当に来た!?

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