~土曜日・凛星の家にて~
現在の時刻、午前10時
今日は「現実逃避クラブ」の皆で集まる日。
そして集合場所は私の家。
今は皆を待ってる状態かな?
ピンポーン
鈴華達が来たようだ。
私は玄関に行き、ドアを開ける。
そして皆を私の部屋へと案内する。
私はそう言い、部屋から一旦出て行く。
部屋からは
「これ可愛い~」
とか、
「凛星って意外にこーゆー趣味してるんだ(笑)」
という声が聞こえてくる。
恐らく私の部屋を勝手に物色しているのだろう。
そんな独り言を言いながら、私はキッチンに行き、ジュースをグラスにいれ、それを人数分用意する。
そして私はジュースの入ったグラスとお菓子の入ったお皿をお盆に乗せ、部屋へと向かう。
ちなみに私の部屋は2階にあるので階段を上る。
物を持った状態なので少し下が見えにくく、上りづらい。
私がドアを開けながらファミレスの店員のモノマネをしながらジュースとお菓子を運ぶと、
など、それぞれの反応が返ってきた。
小さな折りたたみ式のテーブルを囲むように座り、本題に入る。
各々の質問が一斉にぶつけられる。
私はそう言い、本棚から少し新しい雑誌を取り出す。
うろ覚えだが、目当てのページを探る。
そこには
「異世界に行けるおまじない☆」
という見出しが書かれたページがあった。
どうやら皆はあまり乗り気じゃないらしい。
そりゃそうだ。
自分でもなぜここまではっきりとやってみようと言ったのかは分からないが、興味はあったため、少しワクワクしていた。
鈴華がそう言い、雑誌に書いてある手順を読み上げる。
雑誌に書いていた手順はこうだ。
1、複数人でする場合、円になる。
2、全員の手のひらに黄色のペンで☆を描く。
3、手をグーの形にし、前に突き出す。
4、円の中心に適当な鍵を置く。
5、全員で異世界に行きたいと強く願う。
読み上げるのを終えた鈴華はそうつぶやく。
そして私達は囲んでいたテーブルを退かし、全員で円の形になるように立つ。
そして私のペンケースから黄色のペンを取り、☆を描く。
私は花霞にペンを渡し、☆を描いてもらう。
この調子で全員が描き終わり、次に全員で手をグーにし、前に突き出す。
私は自転車の鍵を中心に置く。
全員目を閉じ、強く願う。
~約1分後~
そう言い終わる前に全員目を開けた。
そこには……
見覚えのない景色が広がっていた。
見たところ1つの空間みたいなもので、大きな扉以外、何も無いところだった。
もはや私達が元いた部屋の跡形もなかった。
辺りを調べていた鈴華が声を上げる。
おまじないで使った鍵を思い出した結萌ちゃんがそう皆に問いかける。
そんな事を言っていると、
今度は近くに落ちていた鍵を見つけた花霞が声を上げた。
鍵を見ると、元の私の自転車の鍵ではなくなっていた。
鈴華が花霞から鍵を取り、鍵穴に入れる。
私の周りに緊張が走る。
鈴華から鍵を受け取り、鍵を回す。
ガチャッ
扉は重いので、5人で力を合わせて扉を開ける。
そして扉を開けた先には……
見たこと無いの街並みが広がっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。