_慎也Ver.__
ある日莉沙の噂を聞いた。
莉沙は心音先生…実の兄に恋をしていると。
その噂は吹部の中で流れていた。
俺はその事について触れないようにしてた。
もし触れてしまえば…莉沙が壊れてしまうり
離れてしまう。そんな気がした…
けど、その噂を聞いたせいで莉沙に会うのを少し遠慮してしまうようになった。
莉沙の恋を応援したい。
そんなことを実際面と向かっていえば、変な奴扱いされる。
それだけは嫌だ。
莉沙は噂が流れてることにまだ気づいていない。
このまま気づかないでいて欲しい…
もし気づけば莉沙は二度と俺と会ってくれないかもしれない。
あれ?あれれ?
やばいやばい…
莉沙の手の上から教える形になっちゃってた…
男子にはいつもこうだからつい癖で…
……微笑んだ…可愛い…
おお…!まじか!!
一生このままの匂いでいよっかな!?
_莉沙Ver.__
さっき慎也さんが音を教えてくれた。
その教え方は普通の人とは違くてびっくりしたけど、嫌じゃなかった。
それに…何だか少しドキドキしてる…
お兄ちゃん以外の人にあんな密着されたの初めてだから…?
慎也さんは気づかなかったけど…すごく顔熱い…
慎也さんはよく笑う。
誰かが泣いてても自分が笑って相手を余計悲しませないようにしてくれる。
……多分、今もそうだ。
私がお兄ちゃんに恋してるっていう噂が流れてるらしい。
その噂に私が気づいてないと慎也さんは思い込んでる。
私の耳にその噂が入らないように、最近慎也さんは私のそばにいてくれてる。
私はもう…全て知っているのに…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。