夏休みに入ってから1週間。
私たち2人は映画館に行くことになった。
だが…
ほんと嫌だ…
暑いし。
電車の中は絶対人たくさんいるし…
暑い時に彰人の声聞くと余計暑い…
あっちは意識してないせいで距離は変に近いし…
意外と人多い…?
多いのは元々覚悟してたけどここまでとは…
椅子に吸われるなんて思ってなかった。
いつもそうだから。
人と人の間に立っているしかないらしい。
あっつい…ムカつくぅぅ!!
彰人に手を引かれて私はドア際に行く。けど…
彰人の手を引く力は意外と強くてビックリした。
中学まではヒョロヒョロだったのに、
今じゃバスケをやってるためすごく頼りになる。
彰人は揺れた途端に、
私が寄りかかっていたドアに手を付き壁ドン状態ッ…
あぁ、やばい…顔熱い。
これは夏だからとかそうじゃない。
彰人がすごく近くに居るから…
声が近くで聞こえるからッ……
なにさ…
そんな風にされたら…そんな風には優しくされたら…
期待しちゃうじゃん。
揺れる度に少し私と彰人の肌が触れ合う。
その度心拍数が一気に加速する。
それに気づかないバカな幼馴染の彰人は、
気にせずそのままでいる。
ってことは…
彰人は押されてきてる人達に耐えながらそこにいるんでしょ…?
なにそれ…
カッコよすぎるよ…私の刺激が強すぎる…
この時間はいつまでも続いて欲しい。
ずっとこのまま近くにいて欲しい。
私のためにいてほしい。
けど、それに私は耐えられないから…
心臓が持たないからいつも進展しない。
私は…臆病だから…
私の前髪に触れられた…
それだけなのに私は…、。
小さい頃はお互い結婚しようねって言ったり、
花で指輪作ったり、手繋いで歩いたりしてたのに。
今じゃ近くにいるだけで嬉しい。
触れてもらえるのがすごく好きになってた。
私を…少しでもいいから見て欲しい…
期待させた…彰人が悪いんだから…
‐陽彩さんリクエスト‐
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!