〈佐久間 大介〉
小さい声で照の名前を言った時
やっぱり阿部ちゃんには分かってたみたいで
そう言われ意識を失った
次起きた時は
手錠が外れてた
手錠が外れてても体は動かない
ただ腕が自由になっただけ
阿部ちゃんは何をするつもりなの?
怖いよ
[ガチャ]
阿部ちゃんは何も話さない
何がどうなってるの?
なんでなんにも話してくれないの?
そして
阿部ちゃんは俺の足元にご飯を置く
訳が分からなかった
いつもみたいな事はしない
なんで
[バタン]
俺が質問をする間もなく阿部ちゃんは部屋から出て行ってしまった
阿部ちゃんと話せないの?
そんな...
こんな何一つ無い殺風景の部屋にいたらおかしくなる
1人になってしまったのなら1人で食べないといけない
寂し過ぎる
これからずっとこうなの?
そんなの嫌だよ
俺が照の名前を出したから?
それほど阿部ちゃんは...
阿部ちゃんは俺の事が好きなんだ
誰よりも好きなんだから...
なら俺も阿部ちゃんを...
いや...今はご飯を食べる事に集中しよう
まだ2日しか経ってないのに俺は阿部ちゃんに依存いてるのか
阿部ちゃんと話したい
話さなくてもせめて傍にして欲しい
何なんだろう...この気持ち
1人でのご飯ってこんなに寂しかったっけ
その数分後
[ガチャ]
阿部ちゃんが入ってきた
やっぱり何も話してくれない
それどころか目すらも合わせてくれない...
その阿部ちゃんの声は俺には聞こえなかった
このままお昼も夜もこの状態なのか...
しっかり謝らないと
でもちゃんと話せるのかな
監禁されて俺から阿部ちゃんに話しかけた事なんて無いし
阿部ちゃんが俺の話を聞いてくれるのかも分からない
お昼に話しかけてみよう
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!