第17話

17
239
2021/02/20 12:13


玄関を開けると、元カレの家の匂いじゃなくて








ちゃんと晴人さんのお家の匂いがして









すごくホッとした。






晴人
晴人
真琴ちゃん?





物音で気づいてくれたんだろうか。









向こうのほうから声がする。








リビングの扉を開けた。





真琴
真琴
はい、帰りました。
晴人
晴人
おかえりっ。



リビングでソファに座って







パソコン作業をした晴人さんが、わたしを見た。







ポカンとあいた唇。






またホッとして








堪えていた涙がこぼれそうになって









笑ってごまかす。
真琴
真琴
…ちょっと…片付けて来ます





キャリーバッグを部屋に運んで






荷物をバラすと、また元カレの香りが漂う。







慌てて部屋着に着替えた。








わたしの部屋着はもうこのお家の匂いがするから。




生地を鼻に近づけて深呼吸した。







もう一度片付けを再開しようとしたけど…







さっきの元カレの余裕そうな表情や








言葉が浮かんで辛くなる。







そして、キャリーバッグを元どおりに閉じた。







…今日はダメだ。










夏服なんてまだ使うの先だし









もう少し落ち着いてからにしよう。






晴人さんは、パソコン作業が終わったのか










両腕を上に伸ばしながら









首をゆっくり回していた。









わたしは晴人んの元に行って








床に正座をした。







晴人
晴人
え…どうしたの…?笑
真琴
真琴
…晴人さん…
もうなんだかんだ1カ月くらい経っちゃって…
すみません…
晴人
晴人
真琴
真琴
……てゆうか、条件あーだこーだ言ってないで早く家見つけろって話ですよね…笑



わたしは苦笑いしながらそう言った。




晴人
晴人
俺…いつそんな事言ったの?
真琴
真琴
えっ…?
晴人
晴人
もっとゆっくり探していいんだよ…?
自分が次、住む家なんだから。
真琴
真琴
…だけど…甘えっぱなしじゃ…
晴人
晴人
俺も真琴ちゃんに甘えてるから…
お互い様だって。



そう言って、晴人さんはゆっくり腕を伸ばして







わたしの頭を撫でてくれた。








なんだろ…すごく安心する…。






どうして?








さっきまで元カレと会って







メンタルが弱ってたのかも。









ただただ…それだけ。







な、はず。



晴人さんは、「あ」っという顔をして





晴人
晴人
…ごめん…笑




晴人さんはそう言って






わたしの頭から手を離した。

プリ小説オーディオドラマ