晴人さんに「昨日重かったですか?」なんて…
恥ずかしくて聞けない…
お礼言いたいのに。
わたしは今から元カレの家に向かう。
今日は元カレの学校が3限からという事で
午前中に荷物を取りに行くことになった。
「気をつけてね」
素直にその言葉を聞いて
嬉しくて心が暖かくなった。
わたしは、元カレの家のインターホンを押した。
ガチャ
家に入れば、新しい彼女はいないものの
彼女の靴やらマグカップやら…
前よりごちゃごちゃ物が多くなっていて
初めて来る部屋のように思えるくらい
様変わりしていた。
キャリーバッグを広げて、そこに
夏服をとにかくギュウギュウに詰めた。
これは、無視が正解だと思う。
ほんと。どこまでも勝手だなぁ。
晴人さんの顔が思い浮かんだだけで心強くなって
わたしの口は達者に動いた。
話してるうちに涙がこみ上げてくるけど
ここで泣いたら負けだって思って
こぼれないうちにキャリーバッグを閉じた。
そして、元カレに背中を向けた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!