第27話

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2021/02/27 12:19




いきなりこんな距離で…









…しかも仕事中に目が合っちゃって








心臓が飛び跳ねるかのように









パフを持つ手を素早く引っ込めてしまった。






真琴
真琴
す…すみません




なんで謝ったんだろわたし……。







…すごい…晴人さんほんとにお肌綺麗だなぁ…






リップクリームを最後の仕上げに








塗ろうとしたところで





晴人
晴人
大丈夫、自分で塗ります。




わたしから







リップクリームのついた綿棒を取ろうとした。











その瞬間に手が重なって、ビクッと反応して










…つい綿棒を落としてしまった。







真琴
真琴
あっ、ごめんなさい…!




綿棒は、晴人さんの膝の上にぶつかって








床に落ちた。










ど…どうしよう……










ズボンにシミができちゃった……。






優
ちょっと、真琴どうしたの?




田口さんのメイクをちょうど








終わらせようとしていた先輩がこっちを気にした。






晴人
晴人
あ、リップクリーム落としただけです笑
メイクさんが大げさなだけです笑





晴人さん………。











いや…優しさに浸ってる場合なんかじゃない。











実際にシミができてしまってるんだから。












膝のシミをどうにかしようとしゃがみこんだ。













そんなわたしを見下ろして











晴人さんは少し笑った。






 



そして人差し指を唇の前に立てて












わたしに、" し~ " と合図をしてきた。





晴人
晴人
大丈夫。バレないよ。笑
真琴
真琴
だ…だけど、ここ…




晴人さんは








サッとティッシュで払うように拭いて素知らぬ顔で





晴人
晴人
新しい綿棒ください笑




とだけ言った。








…晴人さんが、かばってくれてなければ









スタイリストさんに怒られるとこだった。












そんなことより、気をつけなきゃ!









仕事は仕事。ドキドキするな、わたし。

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