第3話

Story.2
9
2021/06/18 09:31
あれから2ヶ月。
そろそろもう少し言葉を交わしたい。
あれから百瀬は後ろの女子と仲良くなったらしく、楽しそうに話していた。

笑う目元がかわいかった。
できればもう一度話したい。

そう心の中で思いつつも今日も俺は前後の友達と話す。
前野 大児
なあおいチビー
誰がチビだとこの野郎
ふふっ
確かに貴方少し身長に恵まれてないよね
ふと声のした方を見ると、百瀬が口元に手を当て、笑いながらこちらを見ていた。
話に入ってきてくれた事への嬉しさからか、鼓動が速くなる。きっと今の顔は少し赤いのだろう。
ええっ、そんなぁ…
ここには敵しかいねぇな!
嬉しさを隠したまま、軽いノリでそう返すと百瀬はクスクスと笑って後ろの女子との会話を再開した。
それが、俺の得意な数学の前の10分休みのできごとだった。








数学。

それは俺が唯一、点数の取れる教科。

他は60点ほどだが数学だけは90点後半だ。

それ故、俺は数学が好きだ。
特に円周角や三平方の定理の範囲はたまらない。
俺は考える事が好きなんだ。

待ちに待った数学の時間。
俺たちの数学の先生は問題を解かせた後、10分ほど周りと確認する時間を取る。
この日も当然その時間はやってくるわけで、俺は前の休み時間の勢いに任せ百瀬に尋ねる。
解けたぁー?
……分からなかった……
顔を赤らめ、眉を八の字にして蚊の鳴くような声で気恥ずかしそうに百瀬は言った。
どうやら百瀬は数学が苦手らしい。
今は三平方の定理の範囲なので、俺の得意な範囲だ。
つまりこれは百瀬と話すいい機会なのだ。
これは1:2:√3とイコールで繋いで解けば出るよ
なるほど!ありがとね
そう説明すると、百瀬はすぐに理解したようでパッと顔を輝かせた。
笑顔でお礼を言われて嫌な気分になる人間はいない。



俺は上機嫌で他の奴らにも答えを確認しに行った。

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