「なんでだよ!!なんでだよ!!なんで母ちゃんを殺したんだよ!!」
『人殺し!!人殺し───っ!!』
ここは夢の中なのだろうか。
思い出したくもない光景が、すぐ目に入ってくる。
ああ、これは、*あの日*だ。
いくら強く願ったところで、夢は思い通りに進んではくれない。
「母ちゃん戻ってこないね、大丈夫かな」
「大丈夫だよ、兄ちゃんが探しに行ってくれてるから」
──────ドンドンッ
…おれは、ここに居ない人として、あの日の光景を見ている。
夢の中でもまた会えたことに、嬉しさと虚しさが押し寄せてきて、俺はおかしくなりそうになった。問題はここからだ。全てが崩れたのは、ここから。
「「母ちゃんだ!!」」
違う。
開けるな
…玄弥は、止めていてくれたのか。
なら尚更、こいつが責任を負う必要はなかったのに。
そこで、夢はぷつりと途切れた。
「ん…………」
俺が目を覚ますと、外はまだ薄暗かった。
多分、朝3、4時とかそこら辺だろう。
あの日のことを思い出してしまったので、もうなんだか眠る気にはなれなかった。
「今日は半年ぶりの柱が揃う日か」
別にほかの柱の奴らなんて心底どうでもよかったし、御館様を見たいが為に行っているようなものだった。
───あの日は、俺への呪いの日だ。
俺は、玄弥さえ幸せに暮らして居てくれるなら。それこそ、人殺しでも、構わなかったんだ。
玄弥の声がした気がして、後ろを振り返る。
当然だが、そこには誰もいなかった。
幻聴だったんだ、俺の。
幻聴まで聞こえるようになってしまったとため息を着きながら、仕方なく仮眠を取った。
まだ会議まで時間はあるだろうと。
この時、俺がいつまでも目を覚まさないままだったなら、幸せでいれたかもしれなかったのに。
背後からとんとんと肩を叩かれ、俺は振り返った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。