前の話
一覧へ
次の話

第1話

#1.何もかも失ったあの日。
1,118
2019/12/08 14:54
「なんでだよ!!なんでだよ!!なんで母ちゃんを殺したんだよ!!」



『人殺し!!人殺し───っ!!』











ここは夢の中なのだろうか。
思い出したくもない光景が、すぐ目に入ってくる。
ああ、これは、*あの日*だ。
いくら強く願ったところで、夢は思い通りに進んではくれない。



「母ちゃん戻ってこないね、大丈夫かな」

「大丈夫だよ、兄ちゃんが探しに行ってくれてるから」


──────ドンドンッ



…おれは、ここに居ない人として、あの日の光景を見ている。
夢の中でもまた会えたことに、嬉しさと虚しさが押し寄せてきて、俺はおかしくなりそうになった。問題はここからだ。全てが崩れたのは、ここから。


「「母ちゃんだ!!」」

違う。
開けるな






…玄弥は、止めていてくれたのか。
なら尚更、こいつが責任を負う必要はなかったのに。



そこで、夢はぷつりと途切れた。






「ん…………」

俺が目を覚ますと、外はまだ薄暗かった。
多分、朝3、4時とかそこら辺だろう。
あの日のことを思い出してしまったので、もうなんだか眠る気にはなれなかった。


「今日は半年ぶりの柱が揃う日か」


別にほかの柱の奴らなんて心底どうでもよかったし、御館様を見たいが為に行っているようなものだった。






───あの日は、俺への呪いの日だ。
俺は、玄弥さえ幸せに暮らして居てくれるなら。それこそ、人殺しでも、構わなかったんだ。
不死川玄弥
不死川玄弥
兄ちゃん
不死川実弥
不死川実弥
………え?


玄弥の声がした気がして、後ろを振り返る。
当然だが、そこには誰もいなかった。
幻聴だったんだ、俺の。
不死川実弥
不死川実弥
まいってんな、俺もよ
幻聴まで聞こえるようになってしまったとため息を着きながら、仕方なく仮眠を取った。
まだ会議まで時間はあるだろうと。




この時、俺がいつまでも目を覚まさないままだったなら、幸せでいれたかもしれなかったのに。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あのー
背後からとんとんと肩を叩かれ、俺は振り返った。

プリ小説オーディオドラマ