第2話

鬼はすべて悪のはずなのに
997
2019/12/08 15:14
肩を叩かれて振り返った先には、胡蝶が立っていた。
不死川実弥
不死川実弥
…んだよ
不死川実弥
不死川実弥
用がねえならさっさと帰れ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
…少し、お話よろしいでしょうか
不死川実弥
不死川実弥
…あ?
いつもの笑顔が少し哀しそうな顔になった気がしたが、気がしただけだったのかもしれない。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
私の、姉のこと
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
そして、竈門炭治郎くんのことについて
不死川実弥
不死川実弥
……
不死川実弥
不死川実弥
誰だ、俺は知らねェ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
嘘は結構ですよ、ふふ
にこりと笑う顔はやはりどこか不気味だった。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
私の姉が、昔あなたのことを話していたんです。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
柱の中に、誰よりも哀しい過去を持ちながら、誰よりも強くなりたいと願っている
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
そんな、哀しい人がいると
不死川実弥
不死川実弥
………
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
初めにそれを聞いた時、私はてっきり悲鳴嶼さんのことだと思っていました
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
でも、違った。
不死川実弥
不死川実弥
何が言いてぇのかわかんねぇ。俺はもう…
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
父親、母親、兄弟、匡史さん、そして…カナエ姉さんや他の同僚たち。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あなたの失くしたものを数えたら、私の姉を失くした思いなんてちっぽけに見えちゃいました
不死川実弥
不死川実弥
やめろ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
それに加え
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
禰豆子さんという善良な鬼まで。
あなたの母親が鬼になって家族を殺したのに
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
愛があれば鬼でも人を襲わないなんて
不死川実弥
不死川実弥
やめろって
不死川実弥
不死川実弥
…言ってんだよ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
理不尽だと思いません?
不死川実弥
不死川実弥
やめろ!!!
不死川実弥
不死川実弥
…それ以上喋ったら殺すぞ
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
ふふ、わかりました
俺は別に禰豆子を憎んでるんじゃない。


──親を殺すのは、重罪だそうだ。

なら、仕方が無いとはいえ親を殺した俺は?

胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
最後に…
誤解しないでくださいね。
不死川実弥
不死川実弥
黙ってろ
どういう意味かは分からねェが、もうどうでもいい。思い出したくもない。
………俺がしたことは間違っていたんだろうか。


家族がどこかで幸せになって欲しい。
いや、幸せでなくとも、ただ生きてくれるだけでいい。


それって、そんなに難しい願いなのだろうか。

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