第18話

拾漆︰鬼の列車
1,528
2021/06/05 04:39
その後、煉獄さんはようやく満腹になったのか
口を開く。


煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
君たちはどうしてここにいる。任務か?

炭治郎さんは 、不安気な顔をして頷く 。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
はい。鎹鴉からの伝達で、無限列車の
被害が拡大した、現地にいる柱と
合流するようにと、命じられました。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
うむ!そういう事か!承知した。

煉獄さんと私の向かい側には、炭治郎さんが一人で
座っていて、善逸さんと伊之助さんは通路を挟んだ
斜め後ろの席に居る。





炭治郎さんは頷いた後、やや緊張気味に話し続けた。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
それともう一つ……煉獄さんに
聞きたい事があって
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
なんだ!言ってみろ!!
竈門炭治郎
竈門炭治郎
俺の父の事ですが ───


炭治郎さんは話し始めた。


炭治郎さんのお父様の事。









病弱だった父が、肺が凍るような雪の中で神楽を
踊れて、





その舞 " ヒノカミ神楽 " が戦いに応用できた事。





何とも不思議な話だ。






煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
─── うむ


煉獄さんは考えを巡らせると、答えに辿り着いたのか勢い良く顔を上げた。

煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
だが、知らん!!
竈門炭治郎
竈門炭治郎
ええ!?
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
君の父がやっていた神楽が、戦いに応用できたのは実にめでたいが、この話は
これでお終いだな!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
俺の継子になるといい!
面倒を見てやろう!!
竈門炭治郎
竈門炭治郎
待ってください!
そしてどこを見てるんですか!


炭治郎さんは煉獄さんに全力のツッコミをする。


しかし、煉獄さんはあさっての方向を見ている。

煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
炎の呼吸は歴史が古い。

煉獄さんは唐突に語り始める。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
炎と水の剣士は、どの時代でも必ず柱に入っていた。
炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ。
他の呼吸はそれらから枝分かれして
できたもの。
あなた
私の雪の呼吸はとても珍しいらしいの。
歴代の柱に、雪柱は居ないとお館様が
おっしゃっていたわ 。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
そうなんですか…!!

嘴平伊之助
嘴平伊之助
わっははは!すっげぇすっげぇ!!
我妻善逸
我妻善逸
危ない、馬鹿この!!!


窓の開く音とともに、伊之助さんの笑い声が
車内に響いた。



そんな伊之助さんを善逸さんが、必死に引き戻していた。

煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
───危険だぞ。

煉獄さんが、あさっての方向を見てそう呟く。



でも、煉獄さんの危険の意味は違うという事を
私は知っている。



煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
いつ鬼が出てくるかわからないんだ。
我妻善逸
我妻善逸
え………
善逸さんの顔が強張る。

我妻善逸
我妻善逸
鬼出るんですか、この汽車!??
あなた
出ますよ。
我妻善逸
我妻善逸
俺、降りるぅ~!!!!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
だから、柱である俺が来た!!!!
我妻善逸
我妻善逸
降りまぁぁぁぁぁぁぁす!!!!

頭を抱えた善逸さんが、泣き叫ぶ。



すると、後方の車両に続く戸が静かに開く。



車掌さんがゆっくりと歩いてくる。

車掌
切符…拝見…致します……。

煉獄さんが切符を車掌に渡す。



それを車掌さんは改札鋏かいさつきょうでパチリと切る。



それに続いて、私と炭治郎さん達も切符を渡し
切り込みを入れてもらう。






不気味な音を立てて、天井の灯りが点滅する。



竈門炭治郎
竈門炭治郎
っ……!?
あなた
………。
車掌
拝見…しました……。








煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
………。

煉獄さんは、閉じていた瞼をゆっくりと開くと
その場に立ち上がり、車掌さんの前に立つ。








煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
車掌さん!危険だから下がってくれ!

そう言い、日輪刀を掴む。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
火急のこと故、帯刀は不問にして
頂きたい!






すると、客車の奥の戸に鬼が現れた。

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