その日の帰り道。
駅に向かう途中、声をかけられた。
なんだろう。
私も知りたかったし、静かに待つ。
だって。そんな。
信じられない。
幸助くんの態度は変だった。
じゃあ、なんで動揺してるの?
わかんない……。
私が知らない歩斗先輩……。
でも、それとなんの関係が……。
……そう、なんだ。
スタスタスタ…
やっぱりそうなんだ。
良かった、何も言わなくて。
同じことになるところだった……。
っ!
思ってたよ。
そうだよ。隠してた。
でも、受け入れてくれると思った。
私を助けてくれたの!!
うるさい!!!
しゃがみこんだ私に、莉央先輩が追いつく。
詳しく言いたくないから顔はあげない。
ポンッと肩に手を置かれた。
ビクッ
思い出すから。
本当に。
目を閉じて深呼吸。
大丈夫。あのときとは違う。
私は知らなかった。
莉央先輩が満足そうに笑っていたことを。
あの日から、アニオタを隠すのをやめていたけど。
最近の私は、グッズをグッツを身につけることをやめた。
自分を隠すのはきついけど、またあんなことになるより
マシだ。
そう、自分に言い聞かせながら。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!