第12話

12話
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2021/08/03 11:00
その日の帰り道。
泉莉央
あなたちゃ〜ん♪
駅に向かう途中、声をかけられた。
あなた
あ……莉央先輩
泉莉央
急にごめんね。
昼間のことだけど……言ったほうがいいかな
って。
あなたちゃん、歩斗と仲良かったよね
あなた
はい
泉莉央
こんなこと言いたくないけど……
なんだろう。
私も知りたかったし、静かに待つ。
泉莉央
注意して
あなた
……え?
泉莉央
中学まで、女遊びが激しかったんだよね。
喧嘩も強かったし……。
今は隠してるけど、心配で。
って、その様子じゃ知らなかった?
だって。そんな。
信じられない。
泉莉央
幸助が隠してたもんね。
俺、高校に入って、歩斗と喧嘩
したんだよね。
そのときから、たぶん嫌われてる
幸助くんの態度は変だった。
あなた
でっでも!
今はすごくいい人ですし……!
偏見もありませんから……っ
じゃあ、なんで動揺してるの?
わかんない……。
私が知らない歩斗先輩……。
泉莉央
うん。確かに今は落ち着いてるね。
……あなたちゃん、アニメ好きでしょ?
あなた
え?はい
でも、それとなんの関係が……。
泉莉央
歩斗、アニメとオタク嫌いだから
……そう、なんだ。
泉莉央
とにかく、心配なんだ……
って、あなたちゃん?
あなた
……失礼します
スタスタスタ…
泉莉央
ちょっ、え!?
やっぱりそうなんだ。
良かった、何も言わなくて。
同じことになるところだった……。
???
オタクとか、きもっ
っ!
あなた
………………………っ
???
君と本気で付き合ってると思った?
思ってたよ。
???
そういうの、マジで無理。
言ってなかったじゃん
そうだよ。隠してた。
でも、受け入れてくれると思った。
???
アニメの何がいいの?
キモいだけじゃん。
リアコ?ウザっ
私を助けてくれたの!!
うるさい!!!
あなた
もう……やめて……
しゃがみこんだ私に、莉央先輩が追いつく。
泉莉央
あなたちゃん!
あなた
っ!
大丈夫、なのでっ
詳しく言いたくないから顔はあげない。
ポンッと肩に手を置かれた。
ビクッ
泉莉央
ほんとに?
あなた
は……離して……くださ……
思い出すから。
本当に。
泉莉央
あぁ……うん
目を閉じて深呼吸。
大丈夫。あのときとは違う。
私は知らなかった。
莉央先輩が満足そうに笑っていたことを。


















あの日から、アニオタを隠すのをやめていたけど。
最近の私は、グッズをグッツを身につけることをやめた。
自分を隠すのはきついけど、またあんなことになるより
マシだ。
そう、自分に言い聞かせながら。

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