【続き】
散々バカにされて、偏見を語られて。
怒りより、うんざりのほうが勝ってしまった。
ガタンッ
席を立つと、衝撃の一言を言われた。
嘘でしょ……?
“君と本気で付き合ってると思った?”
確信した。
この人、クズだ。
それから卒業まで、一度も会話しなかった。
そのことがあって知ったのは、好きなものを好きって言う
勇気でも、バカにされるときの羞恥心でもない。
好きなものが、好きな人を遠ざけるかもしれないという
恐怖。
元カレにはなんの未練もない。
でも、あいつから、この怖さを学んでしまった。
私はこのときから、オタクを隠すのをやめた。
でも、歩斗先輩がアニメ嫌いだと聞いた。
だから、グッズをしまった。
のんちゃんは、私のことを心配してくれたけど、私から
すれば、未練なんてあるわけがない。
ましてや、失恋して辛いとか悲しいとか、全く無くて。
のんちゃんにはいらない心配をかけてしまった……。
そう兄って、なんでわかるんだろう。
私が言ってほしい言葉。
そう兄は小さく呟いて、顔を私に向けた。
その表情は、見たこともないくらい真剣で、優しくて、
悲しそうだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。