〈ののかside〉

反則、よね。

あんなに可愛い顔で抱きつくなんて。

だけど、だめ。だめよ、私。

冗談っぽく言うと、あなたは笑った。

半分本気なんだけどね。

しれーっと会話に入ってきたやつが一人。

“やつ”こと幸助を睨む。

私とあなたの時間を邪魔しないでよ。

ガンッ

思いっきり机を蹴ったら、幸助は寂しそうに笑った。

はぁ、もうっ！

あなたを怖がらせるじゃない！

男にナンパされ、連れて行かれそうになった。

そう聞いた瞬間、殺意が芽生える。

そういった私に、あなたが慌てる。

あの人が……。

そう兄こと、本名、田上想矢。

（詳しくは「田上想矢」の吹き出しタップ）

……あなたの初恋の人。

昔のことだけど、それからあなたは恋をしていなくて……。

今でも引きずっていると、疑っている。

「気づかれないように。バレないように」

わかってる。

私はどうしようもなくて、苦しさを隠すために笑う。

〈あなたside〉

キーンコーンカーンコーン

４限目終了のチャイムがなり、昼休み。

と、幸助くんが教室を出ていった数分後。

！？

今、すっごく可愛い声が私の名字を呼びませんでした？

扉の前にいるのは、眼鏡をつけている男子。

私と目が合うと、ニコッとして手招きをする。

トコトコと、少し緊張しながら行くと。

急に差し出されたキーホルダー。

やっぱり私のやつなんだ！！

幸助くんとそのお友達が帰ってきた。

そう言いながら、眼鏡が外される。

例の「イケメンさん」だった。

外した眼鏡をつけ直すところまで見て、教室の中に
引っ張られた。