幸助くんの賑やかな声は、あとどのくらいで聞けるように
なるのかな?
せっかく仲良くなれた風音ちゃんとは、話せなくなった。
拒絶されそうで、怖いから。
そんな私の胸の内なんて、のんちゃんにはバレバレ。
こういうところは厳しい。
お母さんかお姉さんみたい。
タッタッタッ
私、逃げちゃった。
もちろん、逃げた先はのんちゃん。
少しずつバラバラになっていく気がして、怖い。
大丈夫だよね。
きっと、もうすぐみんな学校に来るようになって、風音
ちゃんとも仲良くできるようになるよね。
帰り道。
今日は雨で、私達は電車で帰る。
その時。
声をかけられた。
今だっ!
でも、前にも人がいて。
ガタイのいい男の人に囲まれた。
怖い……。
でも、流石はのんちゃん。
手にはスマホ。
冷静……。
いやいや!
大人しくついていくわけ無い!
私もスマホ持ってるし……、どうにか……。
トンッ
あれ……?
なんか意識が……。
ドサッ
のんちゃん、ごめん……。
のん……ちゃん……?
と、誰……?
まだ目が開かない。
声も出ない。
体も動かない……。
うっすら、目も開く。
体も動くし、目も開いた。
でも、そこにいたのは……。
意地悪な顔で笑う、莉央先輩だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。