ミーンミンミン
うるさい蝉の声が聞こえてくる
そう思い俺は目を開けた
真っ白い天井
ふかふかのベッド
特に不自由ない生活…とは言えないな
俺は本を持って部屋を出た
看護師が俺を心配するのは当然だ
俺は重い病にかかっている
治ることのない病気で余命もあまりない
そう言われた
両親は事故で亡くなってしまった
俺は学校に通うことができないので友人といえる人なんていない
なので俺にお見舞いをしてくる人は誰もいない
することもない俺は日陰に行き本を読むことが日常となっていた
俺が一番落ち着く場所、それは神社だ
病院の隣は神社になっているのでよくここに来ては本を読んでいる
俺はいつも神社の敷地内の奥の方にある木に寄りかかって本を読んでいる
その場所は誰もいないので落ち着くのだ
外はとても暑く、日差しが強い
そしてうるさすぎる蝉の声
本当にうざくて本を読むのに最適ではないが、風が吹いたときの木が揺れる音が心地よく聞こえるのでそこで読んでいるのだ
ザワッ
音のなる方を見たけれど特に何もいなかった
俺は本にしおりを挟み、病院の方へ向かった
病院へ着くと、待っていたのは看護師だった
検査
それはとてもめんどくさい
いちいち看護師の質問に答えなくちゃいけないし、
外で何をしたとか言わなきゃいけない
なんで好きでもないのにこんなことしなくちゃいけないのか
ガラガラ…バタン
目の前には俺と同じくらいの女子がいた
この病室は個室で俺しかこの病室に入院していない
俺は間違ってきたのかなって思った
俺は初めて看護師以外の人と話した
不思議な感覚だった
俺はその時から何かが起こるのではないか
そう思ったりもした
そんな夢のような話あるわけないのに
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!