『ブフフッ』と近くで作業をしていた看護師さんが吹き出した。
それを横目に担当医さんは『はい、』と一つ間をとってから、次の指示をした。
『では、次に僕に触れて下さい。』
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結論から言うと、
『個性コントロールテストは基準点を超えました。雄英体育祭には出ても良いでしょう。』
個性コントロールテストは難なく突破した。
ただ、自分が指定した記憶を見たりする様な事は困難で、
まだ細かいコントロールが上手く出来ずにいるとの事らしい。
『今伝えた通り、細かいコントロールが自分で出来ていない以上、油断は禁物です。個性コントロールテストをクリアしたからと言っても、基準点はギリギリ越えたような物ですからね。』
『はい、』
『それと、手袋はこれからも着用して下さい。』
『分かりました。』
『では、』
担当医は今までキュッと締めていた口元を緩め、雄英体育祭出場許可の書類にサインをくれた。
『どうぞ。』
デスク上に滑らされた1枚の書類を手に取ると、私はすぐさま椅子から立ち上がった。
慌てて診察室を出る前に振り返って、担当医に声を掛ける。
『先生、ありがとうございました!』
『はい、』
担当医は困った様に笑って、ひらひらと手を振った。
その後方で看護師さんもニコニコしている。
『無理しない程度に、怪我しないように、頑張って。』
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。