第4話

雄英体育祭出場許可書
8,585
2020/03/06 22:26
『ブフフッ』と近くで作業をしていた看護師さんが吹き出した。

それを横目に担当医さんは『はい、』と一つ間をとってから、次の指示をした。




『では、次に僕に触れて下さい。』








結論から言うと、



『個性コントロールテストは基準点を超えました。雄英体育祭には出ても良いでしょう。』



個性コントロールテストは難なく突破した。

ただ、自分が指定した記憶を見たりする様な事は困難で、
まだ細かいコントロールが上手く出来ずにいるとの事らしい。



『今伝えた通り、細かいコントロールが自分で出来ていない以上、油断は禁物です。個性コントロールテストをクリアしたからと言っても、基準点はギリギリ越えたような物ですからね。』

『はい、』

『それと、手袋はこれからも着用して下さい。』

『分かりました。』

『では、』



担当医は今までキュッと締めていた口元を緩め、雄英体育祭出場許可の書類にサインをくれた。



『どうぞ。』



デスク上に滑らされた1枚の書類を手に取ると、私はすぐさま椅子から立ち上がった。

慌てて診察室を出る前に振り返って、担当医に声を掛ける。



『先生、ありがとうございました!』

『はい、』



担当医は困った様に笑って、ひらひらと手を振った。
その後方で看護師さんもニコニコしている。



『無理しない程度に、怪我しないように、頑張って。』





あなた

なんでぇぇえ…全然来ないぃい…っ、

『ポチポチポチポチッ』


(駄目だ、全然来ない…どうして?!)


さっきから何度もボタンを押しているのに、一向にエレベーターが5階に上がって来ない。
看護師
あら?木奥 あなたさん?
ふと後方から呼び掛けられて、私はすぐ様振り返る。
看護師
どうしたの、そんなに慌てて。
あなた

あー…えっとー…

看護師
分かった!これでしょ、これこれ!
看護師さんは私の手を引くと大きなガラス窓の付いた廊下に連れてくる。

それから隣の病棟の大きなテレビの付いた一角を指さす。
看護師
あそこに行きたいんでしょ?
あなた

え?!

その一角も大きな窓ガラスに囲まれていて、老若男女問わず、

多くの人が夢中になってテレビを見ている様子が見えた。
看護師
今からだもんねぇ、雄英体育祭!全国テレビ放送だし、あそこの生徒さんにとっちゃ、絶好のアピールの場だもんねぇ。
あなた

い、今から?!
やっぱり間に合わないかも…っ、!

看護師
えっ…どうしたの?

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