『ガタガタガタガタガタタッ…』
ロボットのボディとその関節が軋む音は、
氷壁となったロボットへと駆ける私へどんどん近づいてくる。
私を上から見下ろすように大きな影を落とした仮想ヴィランは…
氷と共にボディを砕いて、私を丸ごと飲み込む。
飲み込まれる最後の最後まで、
何故か私の口角は同じ形になっていた。
初めてのヒーロー実習の授業で、勝己と一対一で手を合わせたあの時と同じ…
私の口角は不敵にも白い歯をほんの少しだけ覗かせて上がっていた。
『ドワァァアア…!』
異常な大きさの土埃が取り残された生徒達を覆う。
生徒達は腕を顔の前で組んで、土埃が目に入らぬように防がんとする。
徐々に噴煙が引いた途端、足留めを食らわされている生徒達は次々に口走り始めた。
薄れゆく噴煙の中でデクくんの声が聞こえる。
顎を触りながら「ふんふん」と頷くプレゼントマイクに応える。
中継モニターに素早く動く影。
それを指さした彼は少し呆れるように笑った。
何かの気配に感じた彼がバッと勢いよく振り返る。
土埃の帯を纏いながら空中でくるんと一回転するなり、轟くんよりも前の地点に着地した。
土埃を混じえた風が私と轟くんの髪を揺らす。
私は口角を上げたまま、後ろにいる彼にそう伝えた。
『ワァァァアアアアッ!!!』
観客の興奮する声が会場中を包む。
モニターには彼とのチェイスをしながらの攻防が映し出されていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。