第26話

1-Aのイレギュラーガール
6,075
2020/08/06 17:00
生徒
おい、彼奴がロボットを止めたぞ!
生徒
足の隙間から通れる!
轟 焦凍
止めておけ。不安定な時に凍らした。

『ガタガタガタガタガタタッ…』

ロボットのボディとその関節が軋む音は、

氷壁となったロボットへと駆ける私へどんどん近づいてくる。


私を上から見下ろすように大きな影を落とした仮想ヴィランは…
緑谷 出久
あなたさん、危ない!
全員
?!
あなた


氷と共にボディを砕いて、私を丸ごと飲み込む。
轟 焦凍
倒れるぞ。



飲み込まれる最後の最後まで、


何故か私の口角は同じ形になっていた。




初めてのヒーロー実習の授業で、勝己と一対一で手を合わせたあの時と同じ…




あなた

(ニッ)

緑谷 出久
?!
爆豪 勝己



私の口角は不敵にも白い歯をほんの少しだけ覗かせて上がっていた。



緑谷 出久
あなたさん!!!

『ドワァァアア…!』

異常な大きさの土埃が取り残された生徒達を覆う。
全員
わぁぁっ!!!

生徒達は腕を顔の前で組んで、土埃が目に入らぬように防がんとする。

徐々に噴煙が引いた途端、足留めを食らわされている生徒達は次々に口走り始めた。

生徒
お、おい…今、誰か下敷きになってなかったか?!
生徒
嘘だろ?!
生徒
何これ、私達死ぬの?!
緑谷 出久
あなたさん、あなたさん!!!

薄れゆく噴煙の中でデクくんの声が聞こえる。









プレゼントマイク
流石だな、やっぱりアイツが一抜けか?

顎を触りながら「ふんふん」と頷くプレゼントマイクに応える。
相澤 消太
いいや、油断したな。
プレゼントマイク
は?
相澤 消太
かなり無茶した奴が居るだろ、

中継モニターに素早く動く影。

それを指さした彼は少し呆れるように笑った。
相澤 消太
轟の後ろに。










何かの気配に感じた彼がバッと勢いよく振り返る。
あなた

言ったでしょ、デクくん。

緑谷 出久
あなた

『先に行くね』って。


土埃の帯を纏いながら空中でくるんと一回転するなり、轟くんよりも前の地点に着地した。
轟 焦凍
…俺より先には行かせねぇ。
あなた

私も。やっと追いついたんだから、そう易易と前を譲るつもりはないよ。


土埃を混じえた風が私と轟くんの髪を揺らす。

私は口角を上げたまま、後ろにいる彼にそう伝えた。







プレゼントマイク
噴煙から飛び出して来たかと思えば、華麗な宙返りからの着地。
なななんと、雄英体育祭予選、第1関門の一抜けはぁぁ…
相澤 消太
プレゼントマイク
1-Aのイレギュラーガール、木奥 あなただぁぁああああっ!!!

『ワァァァアアアアッ!!!』

観客の興奮する声が会場中を包む。

モニターには彼とのチェイスをしながらの攻防が映し出されていた。
プレゼントマイク
にしても、いつ見ても半端ねぇ身体能力してるなぁ、おい!
相澤 消太
木奥の持つ驚異的な身体能力…個性によるものだと間違えられても仕方ない。
プレゼントマイク
かなり無茶してるみたいだけど、そこはどうなの、ミイラマン?
相澤 消太
後で話をする。
プレゼントマイク
怖ーよ、ミイラマン!怖〜!

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