(そりゃそうだよね…ジッパーが何処に潜んでいるのか分からない今、私の素性なんて公に晒せないし、)
体勢を低くして、するりするりとマスコミの間をどんどん進んでいく。
(私は雄英で秘密裏に保護されてる訳だからね…)
漸く校門の真ん前へと来た時、肩をトンッと叩かれた。
私はここで振り返らないのも変だと思い、ゆっくりと振り返る。
私の背に広がっていた光景に私は今気づいた。
沢山の目が私を見ていた。
思わず呼吸が詰まる。
(どうしよう、ここで話さないのも、可笑しい、し…でも、話したって妙に…思われ、る…!)
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…)
この5文字だけが脳内でぐるぐると迷走する。
カメラの用意をした多くのカメラマンが肩に撮影用カメラを担ぎ始め、
私の方へとマイクとレコーダーを向けられる。
(どうしよう、ここを何とか…)
(切り抜けないと…!)
声のする方へと顔を向けると、
2人の男の人と1人の女の人が1番手前の出店の前で立っていた。
派手で凝ったコスチュームを着ている。
私の反応をみると、Mt.レディは紫のハーフマスクの下からでも分かる驚いた表情を見せた。
Mt.レディは私の方へとスタスタと足を進めると、
私の手首を掴んで雄英の中へと引いた。
足はあっという間に校門を跨ぎ、背の高いMt.レディは私を見下ろすとにっこり笑ってウインクする。
Mt.レディはマスコミの方へと手を軽くひらひらと振ると、私の肩を抱いてその場を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。