第25話

予選 第1関門『ロボ・インフェルノ』
6,180
2020/07/02 17:44
プレゼントマイク
おおっと、ここで立ちはだかるのはぁ…ヒーロー科入試・実力試験で使われた仮想ヴィランだ!
スピーカーからプレゼントマイクの声が、この障害物競走に挑んでいる生徒全員に聞こえるよう響き渡る。
プレゼントマイク
果たして未来を担うヒーローのゴールデンエッグ共は第1関門、ロボ・インフェルノの大軍を突破出来るかぁっ?!
緑谷 出久
っ…
グッと下唇を噛んだデクくんの横顔は余裕が無いというよりも、

本気で焦っているみたいだった。
緑谷 出久
なんとかここを突破しないと…!
そう零したデクくんの隣で私も目の前の大軍の突破口を探す。



ロボットの様な機械相手だと、

記憶部分であるデータを操作するのが私が個性でどうにか出来る部分だ。


が、生憎病み上がり状態、且つ個性のコントロールも完全に出来るわけではない私が、

そこまで器用に繊細な作業が出来るとは到底思わない。



(なら、私が今出来ることは…)



『コースを守れば、何をしたって構わない』。




この言葉に縋るだけだ。









片足を前に出して屈み気味になった彼が先頭の大きな仮想ヴィランを見上げると、

鋭い眼差しを向ける。
轟 焦凍
折角ならもっと凄ぇの用意して貰いたいもんだな…
『カチカチカチッ…!』

彼の足元にあった筈の土の姿は氷に覆われ、姿を消した。
轟 焦凍
クソ親父が見てるんだから…!
『シュララララララッッ!!!』

仰ぐように振り上げた右手から氷霧が放たれると、仮想ヴィランが伸ばした腕から氷漬けにされていく。
全員
!!!
あっという間に仮想ヴィランを凍らせて氷壁を作り上げてしまった。

辺りには細やかな氷の礫が散り、舞っている。

上体を起こした彼の口から、ふぅと吐かれた真っ白な息が風に混じって伸びた。



瞬く間もない程に完璧で、圧倒的な攻撃だった。


あなた

再び走り出した彼の背中に真っ直ぐに視線を向けると、今度は私が地面に両手を付く。

授業で教わった徒競走のフォーム、クラウチングスタートになると、腰をすっと上げた。
緑谷 出久
?! あなたさん?!
私はデクくん方に顔を少し向けると、ニッと笑ってみせた。






あなた

先に行くね、デクくん。

緑谷 出久
えっ?!





氷霧の奥へと消えていく、轟くんの姿。


私は逃さまいと、

『ダッ!!!』

後ろ足で地面を強く蹴って走り出した。

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