第7話

雪の結晶が付いた栞
7,901
2020/03/10 17:00
相澤 消太
お前はもっと自分の行動に責任を持て。いいな。
あなた

…はい。

相澤先生は私にそう言い残した後、ゆっくりと重い腰を上げた。

それから例の雄英体育祭出場許可書を私に手渡した。
相澤 消太
そろそろ俺は行く。
あなた

はい、ありがとうございました。

相澤 消太
ああ。

※回想(終)



(相澤先生…私がもし出場したいって言ったらどうなるんだろう…きっと、)
あなた

反対、…されるだろうな…

正直、ここまで出たいという気持ちが強くなるとは思わなかった。

ジッパーの元に囚われる前の幼い頃に、雄英体育祭をテレビで見た事があって、



格好良い



と、目を輝かせた事を今でも自分で覚えている。


出たいと思う気持ちは最初は好奇心だった。



でも、皆が努力する過程を見てるうちに…

ヒーローを目指す皆に憧れて…



自分でもトレーニングや自主練をする様になった。


(黙ってやってたのに、勝己にバレてたけどね…)



廊下を渡り、次の階段へと向かう。

真っ白な床が艶々と照明の光を反射させていた。
その光を追うように足を滑らせる。


(身体、異常なし。体調、良好。)


これも全てリカバリーガールと担当医、そして沢山の人が私を助けてくれたお陰だ。


(雄英に着いたら、絶対にリカバリーガールの所へお礼に行こう。)


うん、と軽く頷いた時だった。


『ヒラッ』
あなた

風に吹かれて、1枚の細長い紙が舞い落ちる。

床に着地した紙に驚いて、私は足に急ブレーキをかけた。
あなた

何だろ、これ?

落ちている物を放っておく事が出来ず、私はそっと拾い上げる。
あなた

栞…

本に挟む、栞。

お母さんやお父さんの本を幼い頃から読んでいた私には、かなり身近な物だった。

栞上部に穴があって、赤いリボンが小さく結ばれている。
白い台紙には何の花かは分からないが、押し花が飾られていた。


押し花の花弁は綺麗に開いていて、

透き通るような薄い水色の花弁が、



雪の結晶のようだった。

あなた

舞い落ちて来た先を見ると、ドアが全開になっていた病室からだった。
あなた

ここからだ…

病室に足を踏み入れようとした時、ふと誰なのか入口付近のプレートに目をやった。

でも、名前は無かった。


黙って病室に入ると、4つベッドが並んでいた。

でも、その内3つは誰も居ない様子で、
奥の窓際のベッドだけカーテンが閉まっていた。
あなた

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