第15話

思わぬ遭遇者
7,554
2020/04/20 17:00
『ザワザワザワ…』

会場内は広く、慌ただしく観客や関係者が行き来を繰り返していた。
あなた

えっと…相澤先生はどこだろう……

会場内の通路を暫くウロウロした私は、

『関係者以外 立ち入り禁止』の小さな表示が貼られたドアを見つける。
あなた


(これって入っても大丈夫なやつだよね…?)


辺りを何度か見渡した後、ゆっくりドアノブを回す。

『ガチャッ』

その時、不意に行き交う人々のたわいのない会話が私の耳に入って来た。
ねぇ、知ってる?今年の雄英の1年生に、No.2ヒーロー・エンデヴァーの息子がいるらしいよ。
知ってる。やっぱり息子くんもヒーロー科なのかなぁ?
そうなんじゃない?今年は1年生の部もなかなか熱そうだよね〜!楽しみ!

(『エンデヴァー』…)


何かが引っかかっているのを感じたまま、私はドアを押した。









細い通路を歩き、再び現れたドアを開けると階段があった。
上っていくと幾つか部屋が並んでいた。


(それにしても、流石雄英…ここまで広いと先生達や皆、知ってる人さえも探すのが大変。)



廊下の奥に階段を示すピクトグラムが天井近くにあるのを見た私は、

真ん中を歩かないように壁に沿うように歩き始める。
あなた

…………皆、何処にいるんだろう…

不意に漏れた言葉と共に、再び彼らの事が頭をめぐり巡る。


(私は皆に会って話がしたいし、謝りたい…けど……)


足が重くなり、進むスピードが徐々に遅くなる。


(皆は…)




────私に会いたくないと思うかもしれない。




そんな事を考える度に、今、自分がこの会場内に来ている事が果たして正解なのかどうか分からなくなる。


いや、始めから正解なんて無いのかもしれないが。




この現状に過ちや現在の状況に原因があったとすれば、

それは誰のせいでもなく、

初めて会った時から皆に自分の事を偽っていた私が悪いのは誰が見ても分かる。



(そもそも私が目を覚ましたこと、知ってるのかな?)
あなた


(取り敢えず、相澤先生に顔を出してから)


『ガチャッ!!!』
ま、待つんだ!!
開会式前にトイレに行きたいのは分かるが、そんなに慌てて勢いよくドアを開けたら危ないぞ!
え?
『ドンッッ』
あなた

っ?!?!

いきなり視界いっぱいに、迫り来るドアの姿が映った。

次の瞬間には額を中心にぶつけ、頭を弾かれたように背面に反る。
ぅお?!
あなた

っ…

『パシッ』

後ろへと座り込みそうになった私の腕を力強く掴んだのは、

しっかりとした筋肉のついた手だった。


『グイッ』

私の腕を引き上げると、
悪い、ちょっと急いでて。怪我は無ぇか?って……
彼は私の顔をすぐさま覗き込む。

すっきりと前髪を上げ、真っ赤なサイドの髪が上へと固められたヘアースタイルが見えた。
き、木奥…?!
あなた

切島くん…

飯田 天哉
大丈夫か、切島くん?!何かぶつかった音がしたぞ!
切島 鋭児郎
そ、それどころじゃねーんだ!皆っ、聞いてくれ!!!
彼は私の腕をしっかりと掴んだまま、ドアの開いたままの部屋の中へと引きずり込む。
切島 鋭児郎
き、木奥が…木奥が来てるぞ!!!
全員
え…?!

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