『ギュゥゥッ…』
思わずベッドの掛け布団カバーを強く握り締めてしまう。
もし私に何かあった時は1-Aの皆に全てを話して欲しい、
と前々から相澤先生にお願いはしていた。
しかし、いざ話したとなると、かなり心に迫りくる苦しいものがある。
私が絞り出す様な声で口を開いたのを黙って見ていた相澤先生は低い声で答えた。
「皆、どんな反応してましたか?」とも、
「私が居ない間はどんな様子でしたか?」とも、
何も聞けそうになかった。
ただ、ありきたりな言葉を返すだけで精一杯だった。
『皆を守る』だなんて綺麗な言い訳を付けて、
実際は皆を騙していたというのが真実ある以外、他の何でもない。
嫌われても、
もう会いたくないと言われても、
軽蔑されても、
何を言われようとも、
文句は言えないのは痛い程分かっていた。
私は約束も守れなければ、綺麗事の言い訳を掲げて皆を騙す。
最低だ。
最低な────
脳内で吐き出される言葉に詰まった私は目を細めた。
(まだ、『クラスメート』の類に入れて貰えてるのかな………きっと、『友達』のカテゴリーにはもう入ってはいないのだろうけど。)
たとえ、
もし彼らが私に手を伸ばしてくれたとしても…
私がした事を無かった事には決して出来ない。
いや、絶対に
私自身がしない。
私はそこで初めて知った。
基本、ヒーロー免許を持たない者が個性を行使してヒーロー活動をするのは許されないという事を。
そして、
それは今回の私に該当するという事を。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。