『バタバタバタバタッ!』
一斉に群れをなした11クラスの生徒達が、スタートゲートであるトンネルに向かって動いていく。
私も負けじと足を前へと動かすも、
『バタバタッッ…』
ある事に気づいて足を止めた。
『ドンッ!!!』
ぶつかった生徒はトンネルに向かう生徒の群れへと入っていく。
まるで大きな生き物みたいだった。
『バタバタッ…』
駆け出す生徒達が私を追い抜いて行くのを揺れ動く風を通して感じた私は、
その場にしゃがみ、靴紐を結び直した。
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『ピロンッ!』
スタジアムの映像パネルに、
トンネル内での大勢の生徒が団子になって混みあう様子が流れる。
『ドタドタッ、バタバタッ!!!』
『ギュウッ、ギュウギュウッ…』
" おしくらまんじゅう " 状態の暗いトンネル内に走り出した私は、
『トンッ!』
地面を蹴り、最後列の生徒の肩を掴んだ。
上を見上げた生徒と目が合う。
踏み台にした生徒に一言謝ると、
身体をそのまま生徒達の頭上に滑らせた。
『トンッ、トンッ、トンッ…』
全ての体重をかけない様に意識をしながら、つま先を弾ませる感覚で次々に生徒の上を飛び移って行く。
『トンッ、トトンッ…』
トンネル内の中間辺りの地点に着いた時、
一瞬にして氷のように冷たい空気がトンネル内を覆った。
『カチカチカチカチッ…!』
瞬く間に広がる氷の地面が生徒達の足を捕らえて離さない。
生徒の足を凍らせて足止めをした張本人は、
真っ直ぐにそのままゴールを目指して走り続ける。
『Bom!』
個性の爆破でトップを目指す勝己、
私の前を行く百さんと切島くん、
ネビルレーザーで一気にトンネル内の生徒から距離をとる青山くん。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。