第3話

個性コントロールテスト
8,933
2020/03/06 22:26


あなた

だ、駄目だっ、間に合わなっ、い!!!


" 今日が雄英体育祭本番 "。


もし、このまま昏睡状態で寝過ごしてしまったら…という考えが過ぎった瞬間に、

何とも言えない恐怖で身が震えた。
あなた

やばいぃ…早く来てぇぇえ…

『ポチポチポチポチッ』

何回押しても特段早くなる機能なんて持ってないだろうに、
焦らされた身体はエレベーターのボタンを連打する。




『本当はこのまま安静にはして頂きたいですが、事が事なので特別にGOサインを出しても良いでしょう。身体も特に異常は見られませんし、動いても大丈夫なよう、治癒を既に施してあります。』

『なら…!』

『但し、』




雄英体育祭の話を相澤先生に聞いた直後、

GOサインが欲しい、と、診察室に駆け込んだ私に担当医は少し厳しい顔をして言った。




『僕の個性コントロールテストを突破したらね。』

『分かり…ました…』




(緊張したな…自分の個性が何処まで変化してるのか分からなかったし…正直、怖かった。)


個性強制増幅剤をUSJ襲撃事件でヘロインに打たれた直後、
私の片目は変色し、瞳が青くなっていた。
その青く変色した片目が現在は姿を消し、以前の私の瞳に戻っていた。





『では、このハムスターに触れて下さい。』




別室に担当医に案内された私はケージ内で元気に動くハムスターを見下ろす。



『個性を使わない事を意識して。』



下唇をキュッと噛み、息を思わず止めてしまう。
脈動が耳までに響いていた。

今まで通りの私なら、触れただけで相手の記憶が私の脳内に流れ込んで来る。
最悪、相手の記憶のフィルムまで対外に出させてしまう。


(怖い、怖い、怖い…)


ケージ内のハムスターに手を伸ばし、生温かい体温に触れた時だった。



『…』

『…』

『………え、…』

『どうかしましたか?』

『何も、見えません…』




驚いた。

思わず担当医の顔を勢いよく見ると、担当医は少しも厳しめの表情を緩ませず、




『次は個性の使用を意識して。』



と指示を出した。

もう一度触れると、『バチンッ』と頭にいつも通り記憶が流れ込んできた。




『見え…ました、』

『何が見えましたか?』

『えっと…担当医さんがこのハムスターと戯れようとして、噛まれたところです。』

『!』


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