それから退院までの1週間、
彼は毎日お見舞いに来てくれた。
なんで私にここまでしてくれるのか、
とても不思議だったけど、
彼の心配してくれる気持ちは素直に嬉しかった
慎と話すうちに、彼はとっても真っ直ぐで、
純粋で、
可愛くて、
素直な人だなと分かった。
ふははって慎が嬉しそうに笑って、
私もつられて笑って、
久しぶりに楽しくて自然と笑えていた自分がいることに気づいた。
彼は私の隣に座って、
私の手をそっと握った。
私はとても驚いて、ただ戸惑っていた。
どうやっても、今の私には...
彼の気持ちに応えることなんてできない。
真っ直ぐな眼差しで私を見る彼。
真っ直ぐな言葉で私の心に直に踏み込んでくる彼。
冷めきった心を温めてくれた彼。
でも...。
私が下を向いてそう言うと、
彼は全て分かっていたかのように、
うん、と優しく頷いた。
真っ直ぐで、ただ純粋に私のことを好きだと言ってくれた彼。
誰の方を向いててもいいから、と言った彼。
誠は自分に呟くようにポツリとそう言うと、
私を優しく抱きしめてくれた。
彼の腕の中はとても温かくて、
優しくて、
私の中のいろんなものを全て包み込んでくれているような気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。